この作品のレビュー
平均 3.9 (137件のレビュー)
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一日で読み切ってしまった。
数日かけて読み終えるタイプの読書をするわたしとしてはなんとも珍しい。
夜中にYouTubeで「1200年の祈り 比叡山延暦寺 不滅の法灯」を観ながら、読破してた。
すっっ…っごい乱暴な分類をするけれど、小説の系統って「芥川賞系」と「直木賞系」に分類されると思うんだ。
で、最近の自分の読書傾向は、完全に後者だったんです。前者は、好みが合えば、海でうおおおおおおと叫び出したくなるような、言葉では現しきれないものを、胸の中に残してくれる。合わなければ、理解できないまま物語が終わってしまうこともある。だから、自分の中で「これなら!」という作品でないとなかなか手が出ない。
ちなみにこの作品は「太宰治賞」を受賞しているので、この例にあてはめると「誰だっけ」と、若干混乱する。
津村記久子さんの作品は「ポトスライムの舟」と「この世にたやすい仕事はない」の2作品しか触れたことがなく、「ポトスライムの舟」は全くと言っていいほど覚えてなくて、昔使ってたmixiレビューをふり返っても残ってなかった。悲しい。ただ、「この世に~」の方はちゃんと覚えていて、「直木賞系」の作品だった印象が強い。だから「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞していたにも関わらず、本作品を「直木賞系」の気持ちで読み始めちゃってて、しかし漂う「芥川賞系」の雰囲気に、「すごい、こんな作品も描けるんだ」と勝手に驚いてる自分がいた。もともとは「芥川賞系」の作家さんでした。自分が忘れてるだけでした、すみません。2021年映画化決定、津村さんのデビュー作。
「この世に~」と本作品の2作品には共通点があった。主人公の正義感の強さと、仕事内容だ。
いずれも福祉の仕事が関連していて、津村さんといえばお仕事小説なイメージがあって、だから福祉関係のお仕事をされてたのかな?と思って調べてみたら全然違った。ちなみにわたしが福祉の仕事をしているのでこの2作品はすごく印象に残った。これを想像力で成し遂げるとは。いやはや。
この作品はもともと「マンイーター」というタイトルで太宰治賞を受賞している。
マンイーターは「人食い」を意味する。この作品においての「人食い」とは。
主人公は大学卒業を控えた22歳の処女。いや、童貞の女。
表紙に「だるい日常 その裏に潜む悪意」と記載があって。
しかし、わたしは気付いている。悪意は、常に存在している。
言うなれば「だるい日常 そこに常に存在する悪意」。
悪意なんてどこにでも存在している。でもわたしたちは日常をこなすために、いつもそれを見ないように、感じないようにしている。主人公は、そうじゃない。その悪意に、ちゃんと立ち向かってゆくのだ。
主人公の飾らなさと、気遣いの人でありたいという思いは、その場の空気につぶされそうになって、時に誰かを傷つけてしまうことがある。でもだからこそ、その偽善者たろうとしない彼女の人柄は信用され、人は彼女に話をする。そして、誰かの日常の奥へと入り込み、そこで毅然として悪意へと立ち向かう。それこそが、主人公が持っている正義感だ。「そこまでするか」というこの正義感は、「この世に~」に出てくる主人公も発揮している。
つかみどころのない登場人物たちと、その日常。普段見ないように蓋をしている出来事を、じっと見つめていくような作業。物語を通して、心の奥深くに入ってまさぐられたことが少しだけ久々で、なんとも形容しがたい気持ちになっている。まだこの世界から抜け出せそうにない。
この作品を読んでからずっと、アジカンの「ソラニン」を聞いている。続きを読む投稿日:2020.06.11
このレビューはネタバレを含みます
京都で学生時代過ごしたので、下宿やバイトや街並みの暮らしの感覚が甦りながら読んだ。初めて読むタイプの作品だった。つらつらと文章が続くが不愉快や退屈な感じはなく、私もポチョムキンなので少し笑いながら読み…終えた。
レビューの続きを読む
「きみは永遠にそいつらより若い」という題名に、日々業務でおじさんに囲まれそいつらの気の使えなさに憤怒しているこの本を貸してくれた友人は惹かれたというが(つまりどんなときも発揮される私たちの若さという利点を彼女はこのタイトルにも見出した)、どちらかというとこのタイトルは被る側の情景に近い気がした……のだけど読み損ねている部分も多く察しが足りないかも。とにかく、どんなことがあってもそれを乗り越えて年を重ねたとしても同じくそいつらも年をとっていて、永遠にきみはそいつらより若く、風景は変わらないのだ……というような?とにかくそういうどうしようもなさに対する怒り?ムカつき?を読み終えた後に感じた。
面白かった。続きを読む投稿日:2024.03.24
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