原発と日本の未来 原子力は温暖化対策の切り札か
吉岡斉(著)
/岩波ブックレット
この作品のレビュー
平均 4.0 (18件のレビュー)
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吉岡さんは、原子力委員会の委員を務めたこともあって、原発と共存していこうという人だ。それは、「世の中に絶対悪として無条件に否定できるものはない」もし、そうしてしまうと、原発推進派と議論の余地がなくなっ…てしまうという。ここからは原発の危険性、問題点を克服しつつ原発と共存していこうという姿勢が伺える。「実質的に脱原発論者に近い」とも言っている。しかし、あの福島の原発震災が起きてからは、「共存すること」の難しさを認識し、脱原発に、より大きく舵をとろうとしているかのようだ。(第2章に2刷に際し、付記がある)どちらにせよ、本書は、現在の原発が置かれている現状に対する分析と多くの問題提起にあふれている。反原発の本はそれなりに刺激的だが、本書のように、原発と共存を計りたいと願ってきた人の書は、また別の意味で啓発される。第1章はそうした筆者の気持ちのゆれを語った部分である。第2章は長期停滞を続ける世界の原発の現況と原発ルネッサンスが必ずしも復活していないことを述べる。こういう情報はとても大切だ。第3章は日本の原発の現状分析で、日本でも原発は低成長であることを指摘する。問題が多すぎるのである。第4章はいわば「国策民営」の原発を早く独り立ちさせ、電力の自由化を進めるべきだと言う。この章でもっとも重要なのは、日本の政府がなぜ原発にこだわるかが書かれていることだ。それは、「日本は核武装を差し控えるが、核武装のための技術的、産業的な潜在力を保持」し、それを日本の安全保障の主要な一環とするという立場をとっているからである。「国家安全保障のための原子力」「原子力は国家なり」なのである。だからこそ、政府の立場からすれば、簡単に脱原発に転換できないわけである。続きを読む
投稿日:2011.05.08
九州大学の副学長であり、内閣府原子力委員会専門委員や経産省総合資源エネルギー調査委員会委員を歴任した原子力及びエネルギー政策の専門家による原子力発電に関する現状と提言をまとめたもの。著者は、原発反対の…立場をとるが、何が何でも反対というわけではなく、多角的に分析をし、利点欠点を明らかにした後、理論的に意見を述べている。本書は、東日本大震災前に書かれたものであるが、日本の原発政策の問題点と原発の未来を考察するために必要な材料を十分に提供しているといえる。重要な箇所を記す。
「「推進派」と「反対派」の中間に位置し、調査研究に裏打ちされた「中間派」が、多数派を占めるのが当たり前なのだと著者は思う」
「原子力発電は、インフラストラクチャー・コストが高くつき、これを加えれば火力・水力発電コストと同等またはやや劣位となってしまうことも周知の事実である。ここでいうインフラストラクチャー・コストとは、揚水発電施設の建設・維持管理費、長距離送電網の建設・維持管理費、立地対策費などが含まれる」
「これら4つの経済的弱点(高いライフサイクルコスト、高い建設コスト、核燃料事業など不透明なシステム全体のリスク、高い経営リスク)ゆえに、全てを自己責任で処理せねばならない自由主義経済のもとでは、電力会社は原子力発電事業を一般的に忌避すると考えられる。政府の手厚い指導・支援があってはじめて、商業原発の成長・存続が可能となる」
「すでに日本ではエネルギー需要及び電力需要はピークを過ぎ、今後ますます減少していくと予想されており、その状況下では設備投資は基本的に老朽施設の一部のリプレイスという形をとる」
「日本の原子力発電の施設利用率は不振を続けている。07年度60.7%、08年度60.0%、09年度65.7%と推移している。欧米諸国の原発の施設利用率は70~80%台が標準であり、90%台に達する国もあるが、それらに比べて日本は突出して低い」
「日本の原子力発電の主要三事業:商業原子力発電、核燃料再処理、高速増殖炉」
「世界の原子炉3メーカーグループ:東芝・WH、GE・日立、アレヴァ・三菱重工」
「(著者むすび)政府が原子力発電を優遇する正当な理由は、その諸特性を一覧する限り乏しい。政府が税金により負担してきた一連の支援(立地支援、研究開発支援、安全規制コスト支援、損害賠償支援等)のコストは本来全て、事業者によって負担させるべきであり、それがエネルギー間の公正な競争条件を確保する上で不可欠である。このように原子力発電事業に対する優遇を全て廃止し、それでも電力会社が原子力発電の新増設や、使用済核燃料の全量再処理や、高速増殖炉実用化路線の護持を望むのならば、政府が万全の保安・安全規制を講じた上で、全面的な自己責任においてやっていくしかないだろう。それば自由で公正な社会の当然のルールである」続きを読む投稿日:2018.11.14
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