カラマーゾフの兄弟〈1〉
ドストエフスキー(著)
,亀山郁夫(訳)
/光文社古典新訳文庫
この作品のレビュー
平均 4.0 (239件のレビュー)
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カラマーゾフの兄弟
大学生時代はドストエフスキーにはまって、『罪と罰』『悪霊』『白痴』『カラマーゾフの兄弟』などを読み耽っていた。あれから30年、今再度読んでみてもまたハマる。もちろん、記憶に残っていた印象と異なる点も…あれば、変わらない点もある。
変わらないのは、『罪と罰』ならラスコーリニコフ、『悪霊』ならスタヴローギン、『カラマーゾフの兄弟』ならイワンに同化すること。まあ、『罪と罰』、『悪霊』の場合、主人公なので当然か。しかし、『カラマーゾフの兄弟』の主人公はアリョーシャということになっている。この人物は「キリスト教思想とロシアの大地」を体現しているのだが、どうも良い人すぎて印象に残らない。思想を感じない。
対して、イワンはキリスト教を根本から考えて、自分なりの理論を展開する。これは無神論となる。この思想には、数年前に小説・映画が大ヒットしたダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチコード』を想起させられた。キリスト教と教会に対する見方はほぼ同じではないか。
物語上は無神論者であるイワンは敗北し最後には冤罪で告発された兄を救う決心をしながらも発狂してしまい、救出を果たせず、自身は斃れてしまう。「キリスト教思想とロシアの大地」が勝利を納めることになるが、ドストエフスキー自身はイワンと同じ思想を持っていたのではないか、と思う。
西欧の社会においてキリスト教が如何に大きな影響を与えてきたのかがわかる。パソコンに例えると、キリスト教はBIOSで、その上に国家というOSが乗っているようなものではないだろうか。翻って現代の日本国は何に乗っかっているのだろうか?
ドストエフスキーは死ぬ前にもう二三回は読みたいと思う。
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イワンの思想は、最初の盛りあがりの場面である、ゾシマ長老の庵室におけるカラマーゾフ一族の寄りあいの際に、新聞に掲載された論文の話でその一端が示されるが、その段階では理解できない。
「僕は、このふたつの要素の混同、つまり教会と国家という個々別々なものの本質の混淆《こんこう》は、もちろん、永久につづくだろうという立場から出発しているのです。 ・・・中略・・・ 僕は逆に、教会のほうが自分のなかに国家をそっくり包含すべきであって、国家のなかのある一隅しか占めないようなことであってはならない・・・以下、省略」
その本当の意味は、中盤の盛り上がり場面でアリョーシャと料理屋で話をするときに語る、自らが作った『大審問官』(十六世紀スペインのセヴィリヤを舞台とした叙事詩)で披露される。
詳細は、以下の解説文を参照してください。
------------北垣信行 の解説文より抜粋。-----------
『大審問官』はぜんたいとしてキリスト教批判である。それはローマ・カトリックの教権主義と社会主義の見地からなされている。ここではイワンと大審問官は、思想的にほとんど同一人物と見てよい。大審問官は、キリストが自由、とくに信仰と善悪の選択の自由を与えたために民衆を混迷におとしいれてしまったものと見、キリストは人間の弱い本性と無気力な性格を実際以上に高く評価して、彼らに実行不可能なヒロイズムを求めていると言って責めている。そして自分たちは逆に彼らから自由を奪って、彼らを従属させ、同時に地上のパンを与えることによって民衆を幸福にしてやったのだ、お前が拒んだ奇蹟と神秘と権威の三つの力でこの事業を成しとげたのだと言って、それを誇る。この、民衆から自由を奪ってパンを与えることによって民衆を幸福にするという点が、ドストエフスキーの理解する社会主義の主張なのである。大審問官は最後にキリストにむかって、自分は悪魔と手を結ぶことによって、「キリストの偉業を修正したのだ」と告白する。
----------引用おわり-----------
以上続きを読む投稿日:2013.09.24
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最初に読むならこれがおすすめ
空前のベストセラーとなった本書。
何が魅力って、読みやすい。
カラマーゾフはサスペンスとしても、宗教書として読んでも、教育論として読んでも面白い。
難しく考えずにページをめくっていくだけで自分にあった…読み方がすぐに見つかるだろう。
ロシア文学というと名前がいろいろ変化してややこしい・・・と思う人も多いが、この訳では一人の名前は原則一種類に統一してあるので混乱しにくい。
ただ、これはデメリットでもある。
「呼び方」に込められた微妙なニュアンスの違いをカットしてしまうからだ。
やはり、翻訳にはそれぞれの良さがある。いろいろ読み比べてみるといいが、とりあえず最初に読むならこれがいいと思う。続きを読む投稿日:2014.07.16
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