スローグッドバイ
石田衣良(著)
/集英社文庫
作品情報
「涙を流さなくちゃ、始まらないことだってあるんだよ」。恋人にひどく傷つけられ、泣けなくなった女の子。彼女に青年の心は届くのか(「泣かない」)。上手に別れるため最後にいちばんの思い出の場所へいく。そんな「さよならデート」に出かけたふたりが見つけた答え――(「スローグッドバイ」)など、普通の人たちの少しだけ特別な恋を綴った10篇。出会いから別れまでの一瞬一瞬をやさしく描く傑作短篇集。
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商品情報
- シリーズ
- スローグッドバイ
- 著者
- 石田衣良
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文庫
- 書籍発売日
- 2005.05.20
- Reader Store発売日
- 2011.03.25
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 3.5 (400件のレビュー)
-
石田衣良さんの作品はおしゃれだ。
それが失恋の話であっても、現代にはびこる社会問題であっても時にはギャング間の抗争さえおしゃれに描かれる。
読者はその軽快でおしゃれな文章とストーリー展開に引き込まれな…がら著者が投げかける命題について思考する。
本作品で描かれる10の恋の物語、現代に生きる人々の悲喜交々がやはりおしゃれな文章と展開で描かれている。
この作品は私にしては珍しく再読した作品。
以前は何歳の頃に読んだものか覚えていないが、IWGPシリーズのまことの活躍に胸を躍らせていた頃かもしれない。
とにかく若い頃には間違いないだろう。
石田節の文章とストーリーに酔って堪能していたはず。
ところが今60も半ばを過ぎて読む本作は70年代、80年代頃に流行っていたカラフルでポップなポスターを眺めるのに似ている気がした。
どこか自分とは随分離れたところの話を聞いているだけのような感覚、実感があまり伴わない。
表題作の「スローグッドバイ」に描かれているおしゃれな別れ方、当時のトレンディドラマを真似た若者の間ではもしかしたらあったかもしれないけれど、それは極一部のお金に余裕のあるお坊ちゃま、お嬢ちゃま達の間での事。
齢を経て知るのは、人間の生活、恋でも仕事でも友情でも、そんなにおしゃれなことは起きない。
実生活ではすべての事が泥臭く、格好悪く、必死にもがくようにして進んでいく、という事。
好きな作家であってもその作品を読む読者の年齢と経験は作品の評価への大きなファクターかもしれない。
本作品中で一番しっくり読めたのは「ローマンホリデイ」
老人ホームで暮らす72歳の女性が21歳の孫娘の名を借りて掲示板で知り合った主人公の若い男性とメールのやり取りをする。
彼女の頭の中には映画「ローマの休日」のグレゴリーペックとオードリーヘップバーンの恋物語と若いころに親しんだ古い銀座の街並みが今でも息づいている。
メールのやり取りをする中で、自分は孫娘の年齢の女子になり「ローマの休日」の感想を語り合い、ローマの町を、銀座の街を自由に散策する。
事実を知った主人公はそれでも彼女を受け入れメールのやり取りを続ける約束を取り付ける。
そんなしゃれたストーリー。
歳を取り「老人」と呼ばれる範疇に入っても、人は自分の中に若さを持っている。
老人ホームのベッドに横たわっている今の自分を切り取って「老人」とみられるのは本意ではない。
世の中の動きに関与することのなくなり世の中から忘れられた老人ではなく、生まれてこの方恋もして夢も持っていた途切れることのない歴史を持ち、それをいつでも振り返ることができる、いつでもその時の自分に戻れる「老人」という呼び名でくくら
れるのではない「自分という人間」なのだ。
過去のあの時の自分は今の自分そのものなのだから。思い出つまりは自分の歴史の中で活躍した自分は過去の誰かではなく今の自分なのだ。
それを受け止めたり共感してくれる人や社会があったら体力は弱っていても「若き日から今までの歴史を持った自分」を自覚して生きることができるように思うのだが。
ただ多くの歳老いた人々は自分の中にある歴史を振り返って今ではない自分に戻っても、それを表現することなく、だから当然受け止め共感してくれる人を持てず自分の中での振り返りだけになってしまい、「今だけ」を切り取られた老人になってしまうのではないだろうか。。
そうやって「老人」となって埋もれてしまう事ににこの72歳の女性は現代の武器で抵抗した。
こはれからの時代に先進的な役割を果たすべきITの一端が、歳を経た女性に力を与える素晴らしき副作用。
主人公と彼女は時代を超越した恋人であることができた。
情報社会の中でとかく途切れがちになるアナログな人間関係は少しだけデジタルに形を変えて息を吹き返すのかもしれない。続きを読む投稿日:2020.08.29
このレビューはネタバレを含みます
【あらすじ】
レビューの続きを読む
「涙を流さなくちゃ、始まらないことだってあるんだよ」。恋人にひどく傷つけられ、泣けなくなった女の子。彼女に青年の心は届くのか(「泣かない」)。上手に別れるため最後にいちばんの思い出の場所…へいく。そんな「さよならデート」に出かけたふたりが見つけた答え――(「スローグッドバイ」)など、普通の人たちの少しだけ特別な恋を綴った10篇。出会いから別れまでの一瞬一瞬をやさしく描く傑作短篇集。
「誰もが人生の主役になりたがるが、夢だとか恋だとか成功とか、どうしてあんなにしんどいものに、みんな手を出したがるのだろう。」
「大人になるというのは、結局「立入禁止」や「この先行き止まり」の標識に素直に従えるようになることだ。」
【個人的な感想】
自分の経験と照らし合わせて...というほど自分のこれまでの恋愛経験がないからか、そこまで深く物語に入り込んで読むことはできなかった。
だけど、短編集なので寝る前にサクッと読むにはとてもよかった。
好きな短編
・真珠のコップ
・夢のキャッチャー続きを読む投稿日:2023.12.15
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