贖罪
酒井法子(著)
/朝日新聞出版
作品情報
薬物事件を起こして有罪判決を受けた酒井法子が、人生初の自叙伝を出版する。事件や薬物、家族や仕事も含め、のりピー誕生から転落までの全軌跡が克明につづられた待望の書。あのとき、あの場所で、彼女は何を思っていたのか。芸能人として突っ走った数奇な半生の中には、しかし、女性や母親としてのありきたりな苦悩が詰まっている。数々の秘蔵写真とともに、日本中が注目した事件とのりピーの「真実」がこの書で初めて明かされる。
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この作品のレビュー
平均 2.6 (24件のレビュー)
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興味本位で、酒井法子の「贖罪」を読んでみた。その興味とは、事実がどうとか、事件の是非、出版のタイミングとかそういうことではなく、「彼女がどのように共感を形成しようとしているのか」という、危機管理広報的…な視点においてである。
告白本の構成としては、ごくノーマルなものになっていると思う。Before/Afterの直接的な転機となった出来事を最初にもってきて、Before→Afterを時系列に並べるという順番だ。下記の各章の切り出し、締めの一文を読めば、大体の内容は把握できるのではないだろうか。
◆各章における、文章の切り出しと締めの一文
第一章:逃亡
・二〇〇九年八月二日午後十一時過ぎ。夫の携帯から着信があった。
・向かった先は、わたし自身の「逮捕」という厳しい現実である。
第二章:転落
・八月八日、土曜日の夜。わたしたちを乗せた車は、マスコミが殺到しているという渋谷警察署を避けて、東京都文京区にある警視庁富坂庁舎へと入って行った。
・「のりピー」と一緒に生きてきた時代が、今日で終焉を迎えたのだと実感していた。
第三章:出自
・わたしは福岡の病院で生まれた。
・十二月八日に、お母さんとふたりで飛行機に乗った。福岡を飛び立って、羽田に降り立った。とても寒い日のことだった。
第四章:萌芽
・一九八六年二月十四日。十五歳になる誕生日を、東京のアパートの一室で迎えた。
・わたしは父親に対して、ありがとうと心から感謝している。
第五章:開花
・十四歳で上京してから高校を卒業するまでの三年あまりは、ただ夢中で突っ走る日々だった。
・わたしの人生は、二十代の後半へと突入していった。
第六章:家族
・一九九七年の夏。独り身となったわたしは、少しずつ自由な時間を楽しむようになり、芸能界の中で、同世代の友だちを意識し始めた。
・薬物が目の前に出現したのは、その矢先のことだった。
第七章:薬物
・自宅の居室の戸を開いたときに、コソコソと隠れるように何か作業をしている夫を見つけた。
・でないと、今は気づいていない本当に大切なものを失い、死ぬほど後悔する日が必ず訪れるから。
第八章:再生
・二〇〇九年九月十七日。保釈後の記者会見を終えてから、わたしは東京都内の病院に入院した。
・この本がひとつの贖罪となって、わたし自身が生まれ変わるきっかけになれば、と心から願ってる。
◆本書に見られる共感形成のテクニック
1:核心となるポイントには概ね触れられている。ただし、プラスイメージの話、マイナスイメージの話を一対で入れるなど、情報配置を慎重に行っている
・逃亡した理由について語る際には、息子の話、母親の病気の話で十分に下地を作ったのちに、薬を抜きたかったという本音を漏らしている。
・奄美大島における薬物使用の供述に時間がかかったことについて、息子の”家族の思い出”を汚したくなかったと述べている。
・警察で働く個々人に対しては良い印象を語りながら、組織に対しては不満を述べている。例:「絶対に漏れないから、信用して話しなさい」と言われて供述した内容が、数日後の新聞に載っているのは本当に不思議だった。
・薬物使用のきっかけについては、夫に勧められたという事実をリアリティを持って描写したのち、だけど悪いのは私という文脈でしめている。
2:薬物使用のシーンに触れる際には、最大限イメージに配慮している
・「この繰り返しによって常習性が備わるのかもしれない」、「常習性や依存性があったと言われても仕方のない状態だった。」等、あえて客観的、推測調で語ることにより、負のイメージを極力排除している。
・薬物使用後の様子について、「わたしの場合は、夢中で家事にのめりこんだ。」と、あくまでも家庭的なイメージの方向へ話をつなげている。
3:家族愛という簡単には否定しがたいことを、テーマに設定している。
全編を通して、家族愛という万人にとって否定しがたいものをテーマに構成されている。子供時代の複雑な家庭環境を十分に語ることが、大人になってから薬物を使用した要因が”家族関係”にあると説明するための、布石になっている。また、途中アイドル期の話を盛り込むことで、読み手自身に、その事実の因果関係をつなげさせるような設計にもなっている。
4:表紙のデザイン、出版社の選定
白を基調としたイメージ、凛とした雰囲気を出すことで清潔感を演出している。また、新聞社を母体とする出版社を選定しているのも興味深い事実である。
光の当て方を変えることにより、事実の解釈は変化する。そして、それを一概に嘘と断定することは難しい。賛否の声もあると思うが、さまざま憶測が生んだことのダメージを考えると、注目度が高いうちに自分名義で情報発信することは戦略として正解であろう。また、自分の棚卸し、客観視ができるようになるというのは、社会復帰への必要なステップなのではないかと思う。
そういった意味で、贖罪とはこの本に書かれている内容ではなく、この本を書くプロセスの中にあったのではないだろうか。続きを読む投稿日:2010.12.05
このレビューはネタバレを含みます
贖罪というには相応しくない内容。ただの伝記で、罪滅ぼしをなにでしたのか全くわからない。甘すぎます。
レビューの続きを読む
芸能人だから…と言われても仕方ないし、他の同業者が同じように見られるのであればかわいそう。投稿日:2017.11.28
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