文学
夢十夜
あらすじ
「こんな夢を見た。」ではじまる十夜の掌編集。真珠貝で穴を掘って埋めて、といって死んだ女の第一夜。背負った自分の子供を捨ててしまおう、と思いながら行く道程を描いた第三夜。行き先の知れない大きな船に乗ってから、死を決して海に飛び込む第七夜。夢=無意識の世界を通して、誰もが抱える得体の知れない不安や、期待が裏切られることの恐怖を描いている。しかしなによりもぞっとするのは、それに抗うことができない圧倒的な無力感にある。無意識の欲望や恐怖を代理消化してくれるという夢。嫌な汗をかいて「あぁ、夢でよかった!」で済むのなら、どんな悪夢でも望むところだ、とも言い難いところではある。

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