狼少年のパラドクス ウチダ式教育再生論
内田樹(著)
/朝日新聞出版
作品情報
独特の発想と軽妙な文章でファンの多い著者の教育論をまとめた一冊。学力低下から教育格差、大学の倒産、私立小学校まで、ニッポンの教育の現状を独自の感性で鋭くえぐる。学力低下は日本人全員が同罪、路頭に迷う高学歴失職者たち、上野千鶴子って誰ですか、石原慎太郎の粗雑な文章、早稲田の受験生をなめたパブリシティ、いまの二十歳は半世紀前の十五歳、1966年の日比谷高校生など。
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商品情報
- シリーズ
- 狼少年のパラドクス ウチダ式教育再生論
- 著者
- 内田樹
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 書籍発売日
- 2007.02.28
- Reader Store発売日
- 2010.12.01
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 262ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (17件のレビュー)
-
内田樹の書いた本は非常に好きで、沢山読んでいる。沢山読んだ、内田樹の本の中でも、この本はかなり好きな部類に入る。
「ウチダ式教育再生論」という副題からも分かる通り、本書は教育、特に大学教育について語っ…た本である。本書は2007年の発行であるが、内田樹は2011年まで神戸女学院大学の教授を務めていた。本書掲載の文章が書かれた当時は、更に、神戸女学院大学で教務部長のような仕事をされていたようだ。内田樹の大学教育に対しての問題意識というか危機感は強烈である。また、文科省の大学政策には非常に批判的なのであるが、教務部長という仕事は、文科省の指示を、居並ぶ教授陣を説得しながら行う必要がある仕事のようで、本書には、そういった、問題意識・危機感・文科省や同僚の教授たちに対しての怒り、等が、ものすごくビビッドに示されている、というか、かなり感情的になっていることがよく分かる文章が多く収められている。内田樹は生きの良い文章を書く人であるが、あまり感情的になった文章を読んだ記憶がなかったので、珍しく感じた。
内田樹の大学教育、というか、文科省の政策に対しての問題意識は数多く書かれているが、その内の大きなものの1つが、文科省が大学に対して、市場原理を持ち込んだという点である。大学とは、そもそも「弱肉強食・適者生存」の世界であるはずがなく、「若い人々を学びへ動機付け、学術の水準を上げ、さらには日本人全体の知性的・道徳的成熟を期する」場所であるはずだというのが、その批判の内容である。そういったことは、効率とか費用対効果という考え方に最もなじみにくい(というか、短期的な費用対効果を測るのは無理)ものだと主張する(私もそう思う)。その他にも批判のネタは沢山あり、それらが本書の中で延々と続いていく(しかし、それは面白い)。
また、それとは別に、「1966年の日比谷高校生・吉田城と新井啓右の思い出」という一文が掲載されている。内田樹は日比谷高校の出身(2年で退学しているので、正確には"出身"とは言えないのかもしれないが)であり、吉田城氏と新井啓右氏は、日比谷高校の同期生である。文章は、吉田城氏が亡くなった際に編まれた、追悼文集に寄せた内田樹の追悼文である。本書の中で(というか、内田樹の他の著作を含めても)、この一文はかなり異質である。吉田城氏(および、新井啓右氏も若い頃に亡くなられており、この文章は新井氏に対しての追悼の意味も含んでいるはず)に対しての想いが詰まった、しっとりとした美文である。これも、読み応えのある文章であった。続きを読む投稿日:2023.11.24
15年前の論説を、10年ぶりに読んで、こんなに面白いもんですかね。
という割には評価が高くないのは、同じ教育論として「町場の教育論」「下流志向」「先生はえらい」との差をつけるためです。投稿日:2022.02.02
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