衝撃!EUパワー 世界最大「超国家」の誕生
大前研一(著)
/朝日新聞出版
この作品のレビュー
平均 3.5 (10件のレビュー)
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中国そして東欧と自分で足を運ぶ事で、その地域の将来の発展性を主張されてきた大前氏が、今回は満を持して拡大ユーロの欧州圏が栄えるという内容の本を書かれています。
サブプライムローン関連の被害を最も受…けているのは欧州であるとか、ユーロは依然として他通貨と比較して過大評価されている、拡大とは言うものの貧富の差が激しすぎて団結出来るのかという意見が出ている中で、この本のタイトルに目が留まりました。
第一次世界大戦が終了してから、世界中がブロックしたように今回もそうなるのでしょうか。いずれにせよ欧州は団結する方向で動いているようなので、その将来性を探る上でも興味ある一冊でした。
以下は気になったポイントです。
・リスボン条約の発効には全27加盟国の批准が必要、残っていたアイルランド、ポーランド、チェコも批准するので、2010年初めに条約が発効し、初代EU大統領が誕生する予定(p28)
・経済発展途上の国々(ルーアニア、ブルガリア等)を加えたことで、EU企業は中国と同程度のコスト(ルーマニアはドイツの10分の1で、欧州内で工業生産ができることを発見した(p32、123)
・EUにはひとつの加盟国で認めた資格は他の加盟国でも認めなければならないという相互主義原則があるので、医者や弁護士は他国でも活用できる(p63)
・経済危機になってもユーロがドルのように崩れない理由は、世界で唯一、規律(財政赤字GDPの3%以下、債務残高同60%以下等)のある通貨だから(p72)
・2003年に日銀総裁に就任した福井氏は、在任中に準備通貨の30%をユーロへシフトした、これは最大の功績(p92)
・EU企業の場合、域内貿易が65%、すべてがユーロ決済なので為替レートを気にする必要がない、ユーロが強くなっても企業は悲鳴をあげる必要なし(p87)
・ドルは円に対しては長期的には高くなるトレンドにあるが、ユーロに対しては安くなるトレンドにある、日本円に対してユーロは強くなる傾向か(p90)
・2008年10月、アメリカは金融安定化法によって、7000億ドルの公的資金で不良債権買取、預金保護上限を10から25万ドルへ引上げを決定した(p94)
・EU関連の集まりは当初は、ドイツ・フランス・イタリア・スペイン・英語の5ヶ国語で行っていたが、最終的には英語になった(p110)
・シェンゲン協定にはアイルランド、イギリス以外は全EU加盟国が加入していて、税関でトラックがとめられることなく物流の一元化が可能になった(p122)
・生産拠点を東方へシフトしていく一方で、本社機能やR&D機能は西側シフト(ベルギー、オランダ、ドイツ、イギリス)となってる(p125)
・イタリアのおもしろい取り決めとして、どこで作ってもイタリアに持ち込んでパッケージ輸出すれば「イタリア製」と認めている(p127)
・2009年1月、ポルシェへVWの株式過半数を持って子会社化したとしたが、金融危機発生、ポルシェ本体の売上激減のため、2011年半ばまでに逆にVWのポルシェの完全統合となる予定(p131)
・マイクロソフトは、アメリカにおいては20年がかりの法廷闘争の結果、「ウィンドウズが排他的である」という闘争には勝ったが、EUでは負けて2000億円程払った(p137)
・日本企業は、国別に出荷価格を設定して国ごとに価格を変えていたが、これはEUやアメリカでは許されない、パイオニアは1979年に435万ユーロを課せられた、2年後のパナソニックは捜査協力をしたので10分の1(p142)
・2008年に松下がパナソニックというブランド名に変えたのは、国によってブランドが違うことによる混乱を収めるため(p145)
・欧州で成功する可能性が高いのは、完成品メーカよりも、矢崎やイビテンのような部品メーカ(p159)
・ドイツで太陽光発電が広まったのは、政府が多額の予算をとって補助金をだしてきたから(p162)
・円キャリー取引が縮小される過程では、為替市場での円買いが増えて、円高圧力となった(p169)
・現在中国では、大都市部での人件費は月額300ドルの賃金水準、2008年から施行された中華人民共和国労働契約法下で解雇が非常に難しくなってきた(p187)
・ロシアが国外に売る天然ガスの価格には4段階ある、1)西欧諸国向け(最も高い)、2)旧ソ連のCIS諸国(半額)、3)バルト3国(1と2の間)、4)ウクライナとベルラーシ(3より少し安め)である(p223)
・ヨーロッパにはデンマークやスウェーデンのように法人税率が高い国もあるが、持株会社にはほとんど税率がかからないといった抜け道もある(p244)続きを読む投稿日:2012.02.20
EUを新しい時代の一つの国家として捉えることから、その巨大な影響力について書かれた本です。
現在のギリシャ問題についてのカギがないかと思って読んだのですが、、、「ギリシャの加盟時に詐称したという噂が…流れた・・・」という程度の触れ方でしたね。この時点ではそれ以上書けなかったってのは良くわかります。
一番衝撃的なのは、ロシアがEUへの加盟する可能性が高く、加盟した瞬間にEUが日本の隣国になるということでした。そうなったら、どうするんだろうか?経営者や政治家は、今から考えていかないといけません。
アメリカ、中国、EUの間で、等間隔の距離を置く外交が必要なわけですが、国際関係でバランスをとるのって日本人は下手ですからねぇ・・・。(汗)
現在の世界観を広げるには必読です。続きを読む投稿日:2018.10.14
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