この作品のレビュー
平均 4.3 (3件のレビュー)
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賢治の生き方から学び,閉塞した現在の社会を生きぬくための本当の「からだ」を手に入れようではないか…という呼びかけの書です。
賢治に関する評論は数あれども,賢治から何を学ぶのかを真摯に追究した本は,…あまりありません。賢治が完全無欠な人間であったわけでもありません。だからといって,「賢治のここは,不十分」と追究したとこで,読者自身は何も変化しない。著者は,賢治から学べるところはしっかり学び,自分の人生に活かせるところは活かしていく…そういう態度が大切だと言います。
鳥山さんは元小学校教師で,現役の頃から,からだ全体で自然とぶつかる実践をしてきました。それらは,月刊誌『ひと』にも発表されてきましたし,その中のいくつかは単行本にもなっているはずです。
鳥山さんのいう「賢治の学校」というのはどんなものなのか,本書の最後に掲載されている津村喬氏の寄稿より引用しておきます。
星の数ほど「賢治の学校」を,というのは夢物語のように聞こえるかもしれない。…ただ賢治のような感性をもった「からだ」に気づき,学びを持ち寄って親たち,子どもたち,教師たちのいのちの場をお互い支えあってつくっていこうという呼びかけであるから,賢治のことばにふれてからだのなかに動くものがあった人の数だけ「賢治の学校」がそこからはじまっていっても少しもフシギはないのである。だれにとっても「それ」が起こるというのは,実はそんなにむずかしいことではない。(本書260ページ)続きを読む投稿日:2017.03.07
教育論、社会批判的としてはありきたりであるものの、
なにか大きな起点となるような、
皮膚の震えを感じた本。
この出会いを大切にしていきたい。
農民芸術概論網要の精読も。
比較をしない、優劣は…ない、ただからだとこころの赴くままに生きる、
それに寄りそうおとなでいる。
人にわかってもらおうとしない。
けれど説明はする、わかりやすく、噛み砕くようにして。
大切なのは、宇宙と心の呼応に呼ばれ、進むこと。
「生徒の中に大事件が起きないような授業は授業ではない」
「子どもたちのからだにとって必要でないものをいくらぶつけても、事件は起きない。からだやこころが本質的に求めているもの、人間の勘や勘定を超えたものをスパークさせる」
「いつも何かを意図し、こういうふうに教育してやろうというのが授業とされているが、そういうものは決して生徒には伝わらない。伝わるのは、無意識のうちにからだから溢れ出てくるものだけだ。」
「無意識部からあふれ出るものでなければ多く無力か詐欺である」
「子どもを早く物質欲から解放するには子どもが欲しいと思うものをそれ以上に与えてやればよい」
「世の中なんてこんなものだ。このへんで妥協しておこう というのが賢治にはなかった」
「読んだ本の断片が、賢治が体で感じていたものにことばを与え、賢治の思想をかたちづくるヒントとなった」
「花を見ても、花のひとつひとつのことばが賢治には本当に聞こえたいた」
「人に何かを与えたことで見返りを期待しない」
「人間は自分のなかにあるものを外界から感じる。自分の中にないものは感じられない」
「だれが正しいか、だれが賢いか、誰が偉いか、本当にはわからない」
「人の王の栄えのほうが野の百合よりも優れているとか、野の百合のほうが人の栄よりもすぐれているというように比べたりはしない」
「どこまでもからだが向かう方向に行く。それしかないからそうする」
「生活のために削られ、あきらめ、よどみ、鈍くなった己の感性を、これでいいのかと揺さぶる。そういうものを感じさせてくれる人というのは、それほどどこにでもいるものではない」
「そのようにしかできないから、そのようにしているだけなのである」
「人にわかってもらうことをしないというのは非常に大事なことのような気がする。いまわからないことでも、自分のからだから生まれた本質的に大事なことは必ず残る。そういう絶対的な信頼と自信が賢治にはある」
「自分のやっていることをわかってもらいたいということと、自分の伝えたいことを相手の体に働きかけ、相手が理解していけるように工夫していくことは別」
「賢治にそういう授業が出来たのは、生徒の体の奥に持っているもの、宇宙からもらっている力をみていたから」
「人間は何のためにうまれてきたんですか―なんのために生まれてきたか、それを考えるために生まれてきたのです。」続きを読む投稿日:2012.06.19
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