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ストアトップ > 特集 > Serendipity ~偶発的な出会い~ > vol.6 効く笑い

vol.06 効く笑い 笑いと哀しみは、表裏一体だったりします インタビュー : 林家しん平(落語家)

女性の十代後半は、“箸が転んでもおかしい”と言われますが、その幸せなバカ笑いもいつまでもは続きません。一口に笑いといっても、とても悲しい出来事が一瞬にして爆笑に変わることも、笑わないとやってられないことも、人の自意識過剰を笑うこともあります。笑いは知らず知らず見えない良い作用をもたらしているのです。

楽しさと哀しさは表裏一体。それが日本人らしい“笑い”

落語はじっくり育てる芸。切磋琢磨してるうちに何かを掴む。

一口に“笑い”といっても、たとえばテレビと落語じゃ大分違う。ほかの落語家さんはほとんど観ないかもしれないけど、僕はテレビ番組でショート・コントなんかを観てはゲラゲラ面白がってるんですよ。でも、今しかお目にかかれない人も多い。果たして3年後、5年後に残っているのが何人いるのか。


一方、落語はじっくり育てる芸。今はヘタクソでも、のちにバケることがあるんです。寄席なんかで切磋琢磨してるうちに、いきなり何かを掴んで「こいつ良くなったね~」って言われるのが落語なんです。そうして高座だとか上がるところが深くなっていき、深さに応じた話を自分で作れるようになっていく。それが噺家になっていくってことなんですよ。その過程で落語家独特のニオイっていうのかな、身に付いていくんですよ。

落語の成り立ち同様に、喜怒哀楽を組み込んだ映画を。

代謝の激しいテレビの世界では、最初から面白さが求められ、結果として一発ギャグが流行る。そうして多くが代謝のサイクルに埋もれていくんです。でも、いつまでも埋もれずに残る人もいる。お笑いをきっかけに司会をやったり、いろんなことができる人たち。最近は「何か持ってる」なんて言いますが、結局、その人のなかにエンターテイメントがあるか否かってこと。今回僕が監督した『落語物語』で主演を務めてもらったピエール瀧さんもそう。彼はミュージシャンなのに楽器を弾かない変わった人ですが、ライヴをやればお客さんみんなを笑わせる。ツボを押さえた人なんです。彼が出ている映画も一通り観ましたが、どの映画でも彼なりのエンターテイメントが活かされてるから、魅力的に映る。本作ではピエールさんに、落語家の日常を演じてもらいました。さっきも言ったように、落語家には独特のニオイや口調がある。これはやっぱり一朝一夕で身に纏えるものじゃないんですよ。でも、普段の面白みを演じさせることで、不思議と落語家のように見えてくる。落語家仲間が「すげーなこいつ。落語できんじゃないの?」って言ってましたよ。もちろん話せませんがね。


今の映画は笑いだけをギッチギチに詰め込んだものや、ココで泣け泣けってだけのものが多いけど、そればっかりじゃ何も残らない。落語家の僕が作るんだから、落語の成り立ち同様に、喜怒哀楽を組み込んだものにしたかった。楽しさと哀しさは表裏一体。泣き笑いってのが人には一番応えるし残る。寅さんみたいな邦画のコメディーって、今じゃほとんど絶滅しちゃったけど、『落語物語』ではそういう日本人らしい笑いを描きました。

林家 しん平

プロフィール

林家 しん平

落語家・映画監督・脚本家

古典落語から、新作落語、古典にしか聴こえない新作落語、三題噺まで幅広く、3つのお題を即座に一席にまとめて噺す三題噺の完成度は高いものがある。
また、アニメ好きで、怪獣グッズや落語家の書籍収集家でもあり、2003年の映画初監督作『駕瞑羅(ガメラ)4真実』は特撮・怪獣ファンの伝説となり映像の世界を開眼。2008年作『深海獣レイゴー』と2009年作『深海獣雷牙』で、怪獣映画は大手以外には作れないという常識をくつがえすなど、まさに希代の落語家として名を馳せる。2月には小説『落語物語』を出版。プライベート・ムービー『ひゅ~どろ 呪いの種』がプロデューサーの目に止まり、公開も予定されている。

最新監督作『落語物語』は3月12日より東劇ほか全国順次ロードショー。
『落語物語』公式サイト別ウィンドウで開きます

こんな本はいかがでしょう

  • 裁判官の爆笑お言葉集

    長嶺 超輝(著)/ 幻冬舎

    裁判官の爆笑お言葉集

    法の番人裁判官が、判決のときや補充質問、説諭などの場面で時に人間味を出した発言をすることがあります。児童買春で捕まった現役裁判官には、「言葉は悪いが、単なるロリコン、単なるスケベおやじだったのではないか」と言い渡します。真剣な場であればあるだけ、思わず呆れて笑えてきます。

  • 適当教典

    高田 純次(著)/ 河出書房新社

    適当教典

    あまりの適当ぶりにタモリさんを不安にさせ、ティッシュペーパーのような人間だと言われる男、高田純次。適当の代名詞である彼が、読者からの質問に答える本書でその実力は十二分に発揮されています。できる後輩が会社に入って心配との質問には、「階段から突き落とすしかないね」と答えます。適当。

  • 舌先の格闘技

    中島 らも(著)/ 双葉社

    舌先の格闘技

    中島らもは喋るのが遅い。それはジャイアント馬場級だと自分で言うほど、ゆっくりと考えてから喋ります。そんな中島が「必殺のへらず口」を体得すべく、いくたのレッスンを経て、松尾貴史やいとうせいこうらと対談形式で実戦修行をしていきます。人の痛いところをついて追い込む、笑いの舌戦中継。

  • 彼氏彼女に言われた悲しいセリフ 哀編

    スマイル(編)/ 扶桑社

    彼氏彼女に言われた悲しいセリフ 哀編

    「アナタよりプレステの方が数倍面白いわ!!」と別れの場面で言われたら、もうどうしていいかわかりません。恋人や夫婦など、恋愛相手に言われた「悲しいセリフ」を集めたブログを書籍化した本書。人の悲しい出来事がこんなにおもしろいのかと笑いながら、自分に当てはめると切なくもなります。

  • 有効期限の過ぎた亭主・賞味期限の切れた女房

    綾小路 きみまろ(著)/ PHP研究所

    有効期限の過ぎた亭主・賞味期限の切れた女房

    テレビにもラジオにも出演しない三十年の潜伏期間を経た、中高年のアイドル綾小路きみまろ。得意の毒舌に嫌味がないのは、まさに彼がその中高年だから。「ここまでやってこれたのは、誰のおかげでもございません。ここにおいでくださました、おひとりおひとりのお客様の前でやっている、私の力」でございます。

  • ボートの三人男

    ジェローム・K・ジェローム(著), 丸谷 才一(訳)/ 中央公論新社

    ボートの三人男

    元は歴史、地理案内を意図して書かれ、英国ユーモア小説の元祖とも言われる本書は、休息と気分転換のため3人の男と一匹の犬がテムズ川を巡るというもの。これが笑えます。イギリス人らしいメランコリックで皮肉な笑いから、プライドや自意識過剰を笑うものまで、天然な三人がマジメに語り合います。

ゴジラ

紙で味わう一冊

『ゴジラ』 / 香山滋(著)/ 奇想天外社

台詞回しや言葉選びなど小説としてはあっさりしているけど、これがあって映画『ゴジラ』が誕生した。日本の怪獣映画、特撮ものの元祖。しかも著者は官僚あがりで、そんなインテリが怪獣を考え出したというのも面白い。オススメしても誰も読まないと思うし、笑いとも関係ないけれど(笑)。まじめなゴジラです。