作家インタビュー:島田荘司

作家インタビュー:島田荘司

2017.05.03 - 特集

※本記事は2014.10.31時点のものとなります。

本格的なトリックと推理で読者を魅了する、名探偵・御手洗潔シリーズ。第1作目『占星術殺人事件』など既配信2作品に加え、このたび新たに13作品が一挙配信され、15作品が揃います。配信を記念して、生みの親である島田荘司先生と、注目の若手詩人・文月悠光さんとの対談が実現しました。島田先生の作品への熱い想いと、詩人ならではの観点で御手洗シリーズを読む文月さんとのユニークな対談をお楽しみください。

島田荘司インタビュー

―熱心なファンが、御手洗シリーズを分析&解説?

島田荘司インタビュー 文月:今回、名探偵・御手洗潔シリーズのうち、全15作品が電子配信されます。すでに配信済みの作品も含まれますが、これらの作品を振り返っていかがですか?

島田: こうやってあらためて取り上げていただくと、ずいぶんと長い間、作家をやっているなぁ……と(笑)。なかなか感慨深いものがありますね。私は、作品を書き終えたら順に忘れていくことにしていて(笑)、忘れないと、次を書けませんから。ああいいものができたと自賛にひたっていたら、筆が止まります。でも今あらためて俯瞰すると、どれも印象深いものばかりですね。書いている時は、ひたすらこの作品が一番いいと思って書いていますけど。こうして時間が経つと、ひとつひとつが語りかけてきます。

文月:今回配信の15作品ですが、この順番で読むといい、というおすすめはありますか? たくさんの作品を生み出してきた先生ならではの読む順番を伺いたくて。

島田: 読む順番ですか。それはぼくが一番わかっていないんですが(笑)、御手洗シリーズには、ありがたいことに熱心な読者の方がたくさんいらっしゃって、作品の内部をきちんと分析してくださっていて、その方たちが言うには、やはり「改訂完全版 占星術殺人事件」から読まなくてはいけないと。シリーズものですから、登場人物の人間関係を把握するには、それが構築されていく順番などあるし、またちょっとした仕掛けを楽しむには、発表順に読んでいただくのが最も安全みたいです。

文月:ということは、「改訂完全版 占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」「御手洗潔の挨拶」「改訂完全版 異邦の騎士」「御手洗潔のダンス」「暗闇坂の人喰いの木」「水晶のピラミッド」「眩暈」「アトポス」「御手洗潔のメロディ」「Pの密室」「ネジ式ザゼツキー」「UFO大通り」「リベルタスの寓話」「星籠の海 上・下」の順ですね。

島田: ああそうですね。ただ「御手洗潔の挨拶」「御手洗潔のダンス」「御手洗潔のメロディ」は短編集ですから、独立して読んでいただいても大丈夫です。そうそう、面白いことに、発表順=書いた順ではないんです。一番最初に書き上げたのは、実は「異邦の騎士」なんです。「占星術殺人事件」を書いていて、半分くらいのところで飽きてしまって(笑)。それで「異邦の騎士」を書いて、また「占星術殺人事件」に戻ったということがありました。

文月:そうだったんですね! 

島田: 「占星術殺人事件」の中に、“以前関わったちょっとした事件がきっかけで、私は御手洗の部屋に入り浸るようになっていた”という石岡君の文章があるんですが、それは「異邦の騎士」の事件のことなんです。これも、読者に言われてわかったんですが(笑)。当時はこれは仕掛けではなくて、ただ自然に書いただけなんです。

―御手洗&石岡君と“腐女子”の密接な関係とは…?

文月:先生の読者は本当に細かいところまで読み込まれているんですね(笑)。今、石岡君とおっしゃいましたが、御手洗シリーズの魅力は、まさに名探偵の御手洗さんと、助手のような友人、石岡君との関係にあると思うんです。トリックはもちろんですが、ふたりのやりとりも読みどころのひとつです。

島田: 一人は推理と論理思考の天才で、もう一人はそれを聞くスチューデント。そんな知的な上下関係は、シャーロック・ホームズとワトソンの関係ですね。

文月:御手洗さんは、天才でストイック。女性への関心もあまりない。一方で、石岡君は、ある意味典型的な日本人といいますか、ちょっと気弱で流されやすく、積極的ではないけれど女好き(笑)。ふたりのキャラクターを書き分けるうえで、気をつけてらっしゃることはありますか?

島田: 考えたこともないですね。極端に違いますから、混同が起きることなんてない。ただ、御手洗の推理論理にじっくりと耳を傾けてくれるような男は、それほど自信家じゃない方がいいですよね。それから、御手洗が女性にあまり関心を持たないのは、推理や論理思考の邪魔になるから。女性、というか、恋愛にまつわる事件は多いですから。だから石岡君はプレイボーイではないけれど、必要以上に女性に惹かれがちの設定にして(笑)、ふたりとも女性に関心がなくて、仲がよすぎると、いろいろ疑われてしまうから(笑)。実際一時期、御手洗の“同人誌ブーム”がありましたね。

文月:本当ですか? つまり、御手洗さんと石岡君の関係を、ある種ボーイズラブ的な関係でとらえて楽しむというか……。

島田: ある種じゃなくて、そのもの(笑)。「暗闇坂の人喰いの木」「水晶のピラミッド」「眩暈」を書いてたころかな。そういうボーイズラブ的傾向に填まる女性を、“腐女子”と呼ぶらしいですね。でも当時はそういう言葉はなかった。非常に熱心に、ユニークな反応をいっぱいくださって、創作の刺激になりました。「Pの密室」は、そんな女の子たちに向けて書いたかな。でも“腐女子”趣味ではなくて、これは彼女らの母性にね。子供のころの御手洗の話なんです。彼の性格形成のドラマかな、早熟で知的な一面を描いてみました。

―奇想天外、壮大なトリックはどうやって生み出されるのか?

文月:御手洗ファンにはたまらない作品ですね。さて、御手洗シリーズの最大の魅力は、なんといっても壮大なトリックです。あのトリックはどうやって生まれるのでしょうか?

島田: どうしてかなぁ(笑)、わかりませんよ。作品によって違うけれども、ふと……、かなぁ。たとえば、「斜め屋敷の犯罪」のときは、建物の絵を描いていて思いつきましたし、「占星術殺人事件」は、中華料理店のテレビで見たニュースがきっかけです。

文月:ひらめきは誰しもあると思うんです。でも、それを重厚なひとつの作品に仕上げることは誰もができることじゃないですよね。私自身、詩を書くにあたって、作品のアイディアを出すことと、それを詩として形にすることは別の作業に感じられます。

島田: 今、とてもいいことをおっしゃいましたね。まさに私も、ひらめきやアイディアを得ることと、それをストーリーに演繹することは、まったく別の作業、能力と感じます。でもひとつ言えるのは、トリックは、絵心のある人ほど得意な分野かもしれない。文章は二次元の世界で、絵は三次元の発想が必要です。読者の発想を超えるには、次元をひとつ超えなくてはいけないのでしょう。壮大なトリックというなら、絵が具体的に見えなければ文章にできない。ですから私自身、トリックを考える際、無意識に絵、つまり三次元世界を脳裏に構築しているのかと感じます。

文月:昔から絵はお好きだったんですか? 武蔵野美術大学のご出身ですよね。

島田: そうです。絵は大好きでした。20代は、デザインも含め、絵を描いていました。当時は寝ても覚めても、ひたすら絵ばかりが頭の中でぐるぐると。あとは音楽と詩に夢中でしたね。

文月:詩をお書きになっていたんですか?

島田: はい、書いてました。デビューしてから、自分の文体がある程度確立するまで、つまりは小説家の文体になるまで、10年かかりました。情報はきちんと入れたうえで、よく流れるしかもリズムのある文体で、着地に向かう、そして余韻をもって終わる。こういうむずかしい作業がなんとかできたのは、詩や音楽に夢中だったおかげと感じます。特に詩は、エッセンスを要約して、なおかつユニークな修飾の着眼、ただ文章だけを書いて修行をするよりも、詩作は合理的な文章鍛錬法だと思います。文月さんは、詩の修行を積んでらっしゃるから、もし小説をお書きになるなら、とても強い武器になりますよ。

―思い込みかもしれないけれど、小説を書ける人間だとわかっていた

文月:ありがとうございます。20代は絵や音楽、詩に夢中だったということですが、なぜ小説家になろうと思ったのですか? 

島田: それは、自分が小説を書ける人間だとわかっていたから、と言うしかないんです(笑)。ですから、30歳になったら小説を書こうと決めていて、実際30歳の誕生日に、それまでやっていたイラストの仕事や雑文の仕事をすべて断って、小説を書き始めました。 

文月:小説の中でも、なぜミステリーを? 

島田: ミステリーを書く人間である、という強い自覚が小学生のころからありまして(笑)、江戸川乱歩の「少年探偵団」や「怪人二十面相」が大好きで読み漁っていて、自分でも小説を書いていたんです。 

文月:給食の時間に、先生がつくった物語を友達に朗読されていたんですよね。 

島田: よくご存知で(笑)。江戸川乱歩の真似をした探偵物語でしたが、みんな食い入るように聞いてくれて。すごくうれしくて、これで味をしめて、自信を持っちゃった。でもあれは、物語の持つ強い力を知った初めての経験でした。その経験があるから、小説を書けると信じたんです。 それから、「謎」も大好きでした。背表紙に「謎」とつく本を片っ端から買い集めて、読み漁った時期もありました。その中にピラミッドの謎もあって、それが「水晶のピラミッド」のトリックの、ベースになっています。 もうひとつ。昔から天才型の人間が好きだったんですよ。ホームズはもちろんですが、乱歩さん、高木彬光(たかぎあきみつ)さんにビートルズ。「恋とペテンと青空と」という映画が大好きで、非常に頭がよくて、自分を天才だと思っている詐欺師が登場するんです。初期のジョン・レノンにもそういうところがありましたが、人を食っているんだけど憎めない、ああいう天才型の人間に魅力を感じていたんです。 

文月:なるほど。そこから御手洗という唯一無二な天才探偵が生まれたんですね。

―不遇な時代を経て、今思うこととは…?

島田: だから、そんな御手洗のために、大掛かりなトリックはとっておいたんです、吉敷ものが売れてからも、そっちには出さないで。奇想天外で壮大なトリックは、御手洗のような風変わりな性格とワンセットなんです。ただ、今でこそ御手洗のようなキャラクターも認知されましたが、デビュー当時はなかなか受け入れられなくて……。

文月:そうなんですか? それはなぜですか?

島田: 当時は松本清張さん流の、社会派といいますか自然主義というか、ミステリーと言えば、頭脳よりも足を使って事件を解決する警察官が行儀にかなっていたんです。御手洗のように、頭脳自慢の青二才が推理で事件を解決するのは生意気だと、許されなかった。しかも御手洗シリーズは、大掛かりなトリックや密室、数々の伏線がふんだんに出てくる。それはリアルではない、作りもの臭いという理屈もあって、なかなか受け入れられなかったんです。

文月:意外です。日本人はホームズのような探偵ものが好きですよね?

島田: ですよね。まずは時代でしょうね。ちょうど高度経済成長期で、人並みを超えた特殊な能力は、むしろうとまれた。市井の人や、それ用の専門組織が事件を解決する、そういうストーリーがよしとされる風潮がありました。

文月:そのような時代を経て、先生はいわゆる“本格”“新本格”と言われる、ミステリーのひとつの流れを確立されました。綾辻行人さんがデビューした時に応援するなど、若手の育成にも熱心です。その熱意はどこから生まれてくるのでしょうか。

島田: ジャンルの延命を願うからです。“本格”や“新本格”の明確な定義はないのですが、私は一定量以上、推理論理が際立っている知的な作品、というとらえ方でよいと思っています。こんなこと宣言している文芸ジャンルは、ほかにないです。いずれにせよ本格ミステリーというジャンルが、日本で、いや世界で、今以上に盛り上がることを期待しています。

文月:先生のミステリーへの熱い思い、とてもよくわかりました。最後に、先生ご自身の、作品を生み出すモチベーションはなんでしょう?

島田: 結局ね、子供のころの感性に戻るんです。ものかげに隠れて、「わっ!」と驚かすのがとても楽しかった。同様に、こういうトリックだとみんなきっと驚くだろうなというワクワク感。それがずっと、私のモチベーションでした。そんな「驚き」を、今回配信する作品で味わっていただけるとうれしいですね。

文/田中美保(スタッフ・オン)

島田荘司(しまだ そうじ) プロフィール

1948年広島県生まれ。武蔵野美術大学卒。
1981年、『占星術殺人事件』でミステリー界に衝撃のデビュー。以後、『斜め屋敷の犯罪』『異邦の騎士』などの「御手洗潔」シリーズ、『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』『奇想、天を動かす』などの「吉敷竹史」シリーズを中心に、人気作品を多数生み出し、本格ミステリーの旗手として不動の地位を築く。 2008年、第12回日本ミステリー文学大賞を受賞。
また綾辻行人さんを嚆矢とする新本格ミステリーの黎明期に、その擁護者として多くの作家のデビューに尽力。現在は「島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」や「本格ミステリー『ベテラン新人』発掘プロジェクト」、台湾で「島田荘司推理小説賞」を主宰。新人発掘に力を注ぐ姿勢は変わらない。
「ゴッド・オブ・ミステリー」として敬われ、現代日本の本格ミステリー界に君臨する巨匠。

文月悠光(ふづき ゆみ) プロフィール

詩人。1991年北海道札幌市生まれ。2010年、高校3年の時に出した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』で中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少受賞。2013年、第2詩集『屋根よりも深々と』刊行。
雑誌に詩、書評などを執筆するほか、NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」での詩の朗読など広く活動中。
Twitter: https://twitter.com/luna_yumi
Website: http://fuzukiyumi.com/

作者 島田荘司によるコメントつき! 『名探偵・御手洗潔シリーズ』 15作品完全ガイド

ガイドをまとめて読むならこちら

不可解で奇妙な謎!
巧妙に作りあげられた殺人迷宮!
鋭い推理で解き明かすのは、名探偵の中の名探偵「御手洗潔」!
奇想と論理と独創的トリックに満ちた日本の本格ミステリーの最高峰がここにある!!
作者・島田荘司先生と、島田先生の大ファンでもある講談社の営業担当Tさんが、シリーズ15作品の見どころをガイドします。

絶対読んで欲しい長編2作

デビュー作は世界水準の超傑作ミステリー! 伝説はここから始まる!

密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。彼の死後、六人の若い女性が行方不明となり肉体の一部を切り取られた姿で日本各地で発見される。事件から四十数年、未だ解かれていない猟奇殺人のトリックとは!? 名探偵・御手洗潔を生んだ衝撃のデビュー作、完全版! 二〇一一年十一月刊行の週刊文春臨時増刊「東西ミステリーベスト一〇〇」では、日本部門第三位選出。

島田荘司先生のコメント
トリックを思いついた瞬間を、30年以上経った今でも、はっきりと憶えています。ベッドの上で、このトリックならみんな驚くぞという強いわくわく感を得ました。かねてから30歳になったら小説を書こうと決めていたし、その2つのモチベーションで書き上げました。

営業担当Tのコメント
名探偵・御手洗潔が初登場する、島田先生のデビュー作にして超傑作! 永遠の名作です。 読者への挑戦が2度にわたって行われますが、謎が解ける人はまずいないでしょう。 大胆不敵にしてずば抜けた発想のトリックが明かされ、複雑怪奇な謎が一瞬にしてほどけてしまう、このめくるめく快感は決して忘れられません。
御手洗と相棒・石岡くんとのやりとりも楽しく、名セリフの宝庫です。私のお気に入りの御手洗のセリフは「はん! 畑の大根を盗もうと思って、地球の裏側から穴を掘っていたモグラみたいだぜ!」です(偏愛)。

ラストシーンに涙あふれる愛のミステリー!

失われた過去の記憶が浮かび上がり、男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活に忍び寄る新たな魔手。名探偵・御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリー『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。

島田荘司先生のコメント
実は「占星術殺人事件」よりも先に書いていたのがこれで、つまり真の処女作です。刊行はデビュー後7年も経ってからですが、読者の評判が予想外によく、当時はびっくりしました。お蔵に入れるくらいで、それほどとは思っていなくて、でもやはり好きな作品です。

営業担当Tのコメント
人気の面ではもしかしたらシリーズトップに来るかもしれません。それぐらい素晴らしい作品です。占星術師であり卓越したギタリスト、しかし喫茶店内で突如演説する変人、といった若き御手洗のさまざまな面がたっぷり見られるのも楽しいです。何よりも友人の危機を救うため、バイクを駆って颯爽と現れるシーンは、御手洗の登場場面のベストではないでしょうか。
そして、この作品は美しくせつない恋愛ミステリーでもあるのです。ラストの手紙にこめられた「想い」を知ると必ず涙することでしょう。

切れ味抜群の短篇集3冊

すべてが面白く心に残る極上の短編集!

嵐の夜、マンションの11階から姿を消した男が、13分後、走る電車に飛びこんで死ぬ。しかし全力疾走しても辿りつけない距離で、その首には絞殺の痕もついていた。男は殺されるために謎の移動をしたのか? 奇想天外にして巧妙なトリックを秘めた4つの事件に名探偵・御手洗潔が挑む短編集第1弾。

島田荘司先生のコメント
トリックのアイディアがまとまって降ってくる時期があり、拾い集めてメモのリストを作り、良いアイディアから順に作品化していきました。この頃の御手洗もの短編は、すべてその流れで、だから迷いが全然なくて、勢いがあるかもしれません。

営業担当Tのコメント
収録されている4つの短編、『数字錠』『疾走する死者』『紫電改研究保存会』『ギリシャの犬』のすべてが面白く、心に残る極上の短編集です。特に『数字錠』は御手洗と少年の交流を描いたクリスマス・ストーリーで、泣けます。ファンの人気もとても高い短編です。ちなみに『疾走する死者』は御手洗潔シリーズ以外の島田先生の作品に登場する人物が何人も出てきたり、『異邦の騎士』とリンクするシーンが描かれたりして、島田先生の熱心なファンならばニヤリとなること受け合いです。

冴えわたる名推理! 本格ミステリーのお手本というべき短編集!

人間は空を飛べるはずだ、と日頃主張していた幻想画家が、4階にあるアトリエから奇声と共に姿を消した。そして4日目、彼は地上20メートルの電線上で死体となっていた。しかも黒い背広姿、両腕を大きく拡げ、まさに空飛ぶポーズで! 画家に何が起きたのか? 名探偵・御手洗潔が奇想の中で躍動する快作ぞろいの短編集。

島田荘司先生のコメント
当時、雑誌編集者の強い意向で、講談社ではノンシリーズ短編のみ、御手洗短編は光文社のミステリー専門誌「EQ」に書いていました。でも本は、御手洗ものが講談社、ノンシリーズは光文社から出るというねじれが。これは単行本編集者の意向。頓珍漢でしたね。

営業担当Tのコメント
短編集第2弾です。短編の中でも飛び切りの不可能状況を扱った『山高帽のイカロス』(タイトルもいい!)、トリックが行われる情景が美しい『ある騎士の物語』、浅草を舞台に奇想天外な犯罪を暴く『舞踏病』、ワトソン役の石岡くんが描く御手洗のポートレート『近況報告』の4編を収録。どれも充実した内容で、本格ミステリーならではの面白さが存分に味わえます。

名探偵の過去と現在を伝えるバラエティ豊かな短編集!

何度も壊されるレストランの便器と、高名な声楽家が捜し求める美女。無関係としか思えない2つの出来事の間に御手洗潔が存在する時、見えない線が光り始める。御手洗の奇人ぶり天才ぶりが際だつ「IgE」のほか、大学時代の危険な事件「ボストン幽霊絵画事件」など、名探偵の過去と現在をつなぐ4つの傑作短編を収録。

島田荘司先生のコメント
ロスアンジェルスに10年住んでいたのですが、「さらば遠い輝き」は、LAにいたから書けた作です。サンタモニカのビーチと、シュワルツェネッガ―のレストランが舞台。松崎レオナ主役のこの短編は、ハリウッドの匂いがして、女性読者に好まれているようですね。

営業担当Tのコメント
短編集第3弾です。「IgE」と「ボストン幽霊絵画事件」は本格ミステリー、「SIVAD SELIM」は御手洗のギター演奏シーンが盛り込まれた一種の番外編、「さらば遠い輝き」は松崎レオナがメインの特別編というちょっと変わった色合いです。御手洗がかつてハーヴァード大学の学生だったこと、今はスウェーデンで脳の研究をしていることがわかります。御手洗と石岡くんがケンカして冷戦状態になったり、レオナが2人の仲に嫉妬したり、キャラクタードラマも楽しめます。

時空を超えて繰り広げられる超絶の名推理! 超大作ミステリー!

エジプト・ギザの大ピラミッドを原寸大で再現したピラミッドで起こる怪事。冥府の使者アヌビスが5000年の時空を超えて突然甦り、空中30メートルの密室で男が「溺死」を遂げる! アメリカのビッチ・ポイントに出現した現代のピラミッドの謎に挑む名探偵・御手洗潔。壮大なテーマに挑んだ本格ミステリーの大作。

島田荘司先生のコメント
自作の舞台に私は、何故か「書いてから行く」ことが多いのですが、この作は珍しく執筆前にエジプト取材に行きました。ちょうど湾岸戦争の時で、通訳も友人も連れず単身。今思えばよくそんな危険な時期に、危険なことをしたと思う。でも度胸はつきました。

営業担当Tのコメント
長編第5作です。アメリカ、エジプト、タイタニック号船上と物語は時空を超えて壮麗に展開します。ピラミッドの秘密、文明溺死論、出没する怪物アヌビス、そしてありえざる密室殺人と内容も盛りだくさん。ヒロイン・松崎レオナはハリウッド女優となって、御手洗に事件解決の依頼に訪れます。クールに突き放す御手洗と、情熱的に御手洗を愛するレオナの関係の変化も見どころです。石岡くんは、あまりに美しいレオナにおたおたしてばかりです。しっかりして!

眩暈

島田荘司 / 講談社文庫

¥1,100 (税込)

世界の終焉が近づく!? 新たなる『占星術殺人事件』とは!?

切断された男女が合成され、両性具有者となって甦る。窓の外には荒涼たる世界の終焉の光景が広がっているばかりだ。『占星術殺人事件』を愛読する青年が書き残した戦慄の日記が示すものは何か。醜悪な現実世界に奇想と驚天動地のトリックの矢を放つ。ミステリーの新たな飛翔を決定づけた傑作。

島田荘司先生のコメント
新本格ミステリーの立役者である伝説の編集者、宇山日出臣さんが書いたキャッチコピー、「醜悪な現実世界に、奇想と驚天動地のトリックの矢を放つ」が忘れられません。紙の本(ハードガバー)の造本・デザインもすごく凝っていて、とても気に入っています。

営業担当Tのコメント
長編第6作です。次々と異常なことが起き、ついには「世界が一変する」という強烈な謎に引っ張られ、一気に読んでしまいます。現実とは思えない、幻想的で異様な手記を一読して、すぐ裏側に秘められた真相の一端を見抜く御手洗ですが、いつものように石岡くんにはなかなか答えを教えてくれません。御手洗の言葉がどんどんイジワルになって、石岡くんがすねる感じのやり取りもお約束ですね。石岡くんを見捨てないで!

アトポス

島田荘司 / 講談社文庫

¥1,386 (税込)

虚栄の都・ハリウッドに甦る吸血鬼! 本格ミステリーの新たなる地平へ!

虚栄の都・ハリウッドに血でただれた顔の「怪物」が出没する。ホラー作家が首を切断され、嬰児が次々と誘拐される事件の真相は何か。女優・松崎レオナの主演映画『サロメ』の撮影が行われる死海の「塩の宮殿」でも惨劇は繰り返された。甦る吸血鬼の恐怖に御手洗潔が立ち向かう。渾身のミステリー巨編が新たな地平を開く。

島田荘司先生のコメント
1年に1作、大長編を発表していた時期の、締めの一作ですね。スターのレオナが主軸なので、やはりハリウッドの香りが色濃くただよいます。当時はLA在住で、雑事にわずらわされることもなく、執筆にかけるエネルギーと、充分な推敲の時間が取れました。

営業担当Tのコメント
長編第7作です。『水晶のピラミッド』と同じく、ハリウッドの映画撮影現場が事件の舞台となり、今度は松崎レオナが殺人容疑者になってしまいます。そこに吸血鬼伝説もからみ、展開は波乱万丈。サロメ役に入れ込むあまり、レオナの精神はバランスを失いつつあるのでなおさらハラハラします。レオナを救えるのは御手洗だけですが、その登場は物語が4分の3過ぎてから。待たせます! そこから圧倒的な推理力と行動力で一気に謎を解く、そのスピード感は圧巻です。なお石岡くんは残念ながら、長編で初めて登場しません。

奇妙な童話と異形の死体。謎を解く鍵は「脳」の中に!

記憶に障害を持つ男が書いた奇妙な童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』。そこには蜜柑の樹の上の国、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機などが描かれていた。それらはいったい何を意味しているのか? 御手洗潔は男の脳内の迷宮を探り、男の過去と童話に隠された驚愕の真実に到達する! 本格ミステリー長編の野心作。

島田荘司先生のコメント
大長編執筆の経験が、綿密な推理の論理だけで作品を構成してみたい、それだけで充分に豊饒な物語と成し得る、そういう信念を育ててくれました。こうした自らの仮説に挑戦した野心作です。ジャンル延命のヒントも、きっとそこに見つけられるはずと考えました。

営業担当Tのコメント
なんとストーリーの前半は「ぼく」の一人称で、御手洗視点から語られます。これは新鮮です。御手洗が脳の研究者としても超一流であることがわかります。謎は「脳」の中にある。御手洗が挑むミステリー、つまりは島田先生が目指している本格ミステリーが新たな進化を遂げている、と感じました。

力作ぎっしりの中編集3冊

御手洗は幼い時から天才探偵だった! 名探偵のルーツがわかる中編集!

完全な密室で発見された残虐な刺殺体。周囲のぬかるみに足跡も残さず消えた犯人。そして現場の床に整然と敷き詰められた赤い紙の謎。幾重にも重なる奇怪な状況に警察は立ち往生するが、小学2年生の御手洗少年は真相を看破する。表題作のほかに、名探偵・御手洗潔が5歳の頃に遭遇した「鈴蘭事件」を収録。ファン垂涎の1冊!

島田荘司先生のコメント
「鈴蘭事件」の幼稚園児御手洗は、腐女子ファンからのリクエストだったような記憶。「Pの密室」は、アメリカの名門ミステリー専門誌「EQMM(エラリークイーンズ・ミステリマガジン)」に英訳版が掲載され、短編アメリカ進出の、扉を開いてくれました。

営業担当Tのコメント
御手洗潔のクロニクルで、ついにその幼少期が描かれました! それにしても幼稚園児の時からとんでもない推理の才能を発揮し、小学2年生で警察をも凌駕するとは…天才すぎる! 子供の頃からズバッと本質に切りこむ話し方だったのも、いかにも御手洗らしく、その一方で自分の正義感をどう表せばよいのか、悩んだりもしています。御手洗のキャラクターのルーツが深くわかる中編集です。もちろんトリックも秀逸で、オススメです。

追いつめられた女が取った最終手段とは? 迫力の中編集!

迫力の中編集。異様な姿で死んでいる男が鎌倉の自宅で発見された。白いシーツを体にぐるぐる巻き、ヘルメットとゴム手袋という重装備。この男の近所に住む老女は、戦争をしている宇宙人たちを見たという。これはUFOがからんだ殺人なのか? 表題作「UFO大通り」のほかに、御手洗潔の「遠隔推理」と追いつめられた女の行動の対比が見事な中編「傘を折る女」の計2作を収録。

島田荘司先生のコメント
脇をからかう御手洗の言動が、一番決まっているのが「UFO大通り」だと言われることがあります。この時期、アナフィラキシー・ショックとか、人体の免疫機能に興味を持っていました。人体の不思議な反応が、意表を衝くミステリーを作り出してくれるんです。

営業担当Tのコメント
島田先生の文章は読みやすく、リズム感があるのですが、とりわけ女性の一人称で物語が展開する時、異様な迫力があります。『傘を折る女』では追いつめられた女性の心理と行動が克明に描かれ、読んでいて息苦しいほどです。でもやめられない。そういう吸引力が文章にあります。御手洗のあまりに鮮やかな推理は変わらず(とりわけ『傘を折る女』は絶品)、石岡くんとのコンビネーションも冴えています。

人間と世界の奥底にある闇に御手洗が切り込む! 国際スケールの傑作中編2編!

傑作中編集。民族紛争地帯のボスニア・ヘルツェゴヴィナで、酸鼻を極める切り裂き事件が起きた。心臓以外のすべての臓器が取り出され、電球や飯盒の蓋などが詰め込まれていたのだ。殺害の容疑者にはしかし、絶対のアリバイがあった。RPG(ロールプレイングゲーム)世界とこの事件が交差する謎に、天才・御手洗潔が挑む。同じく民族紛争がもたらした怨念が胸をえぐる中編『クロアチア人の手」も収録。

島田荘司先生のコメント
御手洗もの、だんだんに中身が凝ってきて、短編では書ききれないと思うようになり、中編が増えています。国際的にヘビーなテーマにかかわればなおさらで、その一方でアメリカ映画の影響もあったものか、ヘリコプター部隊のかっこよさも描いてみました。

営業担当Tのコメント
『リベルタスの寓話』と『クロアチア人の手』の2つの力作中編が収録されています。事件の背景に民族紛争やゲームの仮想通貨があり、それがトリックにも影響を及ぼしています。いわば島田先生が提唱される「21世紀型本格ミステリー」といえます。特に『クロアチア人の手』のトリックのビジュアルイメージは鮮烈です。どちらの中編でも被害者の殺され方が残虐なのですが、それが民族間の憎悪という、いまだ解決しようがない問題がもたらしていることに、やりきれないリアルさがあります。

コミックで読む『名探偵・御手洗潔シリーズ』

島田荘司 (原作) 原点火 (漫画) によるコミカライズ作品も好評配信中!

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