魔都
久生十蘭(著)
/東京創元社
作品情報
『日比谷公園の鶴の噴水が歌を唄うということですが一体それは真実でしょうか』──昭和九年の大晦日、銀座のバーで新聞記者・古市加十に話し掛けてきたのは、来遊中の安南国皇帝だった。奇妙な邂逅をきっかけに古市が皇帝の妾宅へ招かれた直後、彼の眼前で愛妾が墜死、皇帝は忽然と行方を晦ましてしまう。この大事件を記事にしようと古市が目論む一方、調査を担当する眞名古明警視は背後に潜む陰謀に気付き、単身事件に挑む──。絢爛と狂騒に彩られた帝都・東京の三十時間を活写した、小説の魔術師・久生十蘭の長篇探偵小説。初出誌〈新青年〉の連載を書籍化、新たに校訂を施して贈る。/解説=新保博久
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商品情報
- シリーズ
- 魔都
- 著者
- 久生十蘭
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 東京創元社
- 書籍発売日
- 2017.04.21
- Reader Store発売日
- 2017.04.22
- ファイルサイズ
- 1.8MB
- ページ数
- 514ページ
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この作品のレビュー
平均 3.8 (16件のレビュー)
-
この作品は、フォローしている方のレビューから、知ることができました。ありがとうございます。
一時期、「新本格もの」ばかり、読み耽っていた頃がありまして、私の中で探偵推理小説といえば、それらのようなも…のだとイメージしてしまう傾向があります。ただ、あまりに読み過ぎて食傷気味になって、今では海外ものや、少々毛色の違うものを読んだりしています。
いくつか挙げると、島田荘司なら、「御手洗潔シリーズ(ある意味、すごいのは石岡君だと思うが)」、綾辻行人なら、「館シリーズの鹿谷門実」、有栖川有栖なら「火村英生の国名シリーズ」、他にも、二階堂黎人、麻耶雄嵩、等々、細かい差異はあるにしても、個性あふれる探偵がいて、事件に臨み、数々のトリックを見抜き、犯人と対峙して、何かしらの形を残すというスタイルに、安心感のようなものを感じていました。もちろん、どんでん返しも含めて。
そして、戦前の日本ミステリの三代奇書。
小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」は、昔、読んだが、難しく感じて、途中で挫折。
夢野久作の「ドグラ・マグラ」は、現実世界に帰れるか不安なので未読。
中井英夫の「虚無への供物」は、登場人物たちの推理合戦が面白かった記憶がある。
一応、上記の三つだと、私は思っていたのですが、中井英夫は戦後の作品なので、代わりに、挙げられるのが、今回の作品、久生十蘭の「魔都」とのこと。
随分、前置きが長くなりましたが、要するに、読み始めて、この作品も今まで読んできたような探偵小説だと思ったのですよ、途中までは。
レトロな文体や表現は、最初こそ読み辛かったが、次第に味があるように感じられ、連載当時の作品なので、毎回毎回、前回のあらすじが若干くどいのもご愛嬌。探偵役の「眞名古明」の陰気な雰囲気とは裏腹に、不正に対しては誰よりも厳しい冷徹さと、しつこさを見せる性格と、確かな知識に基づいて手がかりを見つけていく有能さは、魅力十分。更にもう一人、夕陽新聞記者の「古市加十」の冒険にも目が離せない、のだが。
解説を読んでいくと、ああ、とは思った。そうだよね、と。探偵小説というよりは物語を堪能するものなのかもしれない。しかし、裏切られたというよりは、何が起こったの? といった、どうしていいかわからない空虚な感じと、それでも探偵小説としても成り立つという、意地にも近い、私の思いと。
そういえば、序盤のページで作者自ら予告していたのを思い出したけど、それがまさか・・途中までは寧ろ、滑稽ささえ思わせる展開だったのに、終盤でいきなり凄惨な感じになったり、主要人物の末路があんなことになるとは・・ここまで書いて、やっと昭和十年の東京を「魔都」としている意味を実感した。どこで何が起こっているのか、殆どの人が知らないことの恐怖を。探偵ものや物語としては、どうかと思う方もいるかもしれませんが、ある意味、驚異、凄さを感じました。しばらく銀座はトラウマになりそう。続きを読む投稿日:2021.10.05
体言止めや四字熟語による独特な文章のリズム感がまず印象に残る。読みやすいとは思えないが、講談師の噺を聞いているような気分になってきて、癖になりそう。
文集は濃く、やたらと多い登場人物は残らず胡散臭く、…次から次へと事件がおこり、新事実が後出しされ、筆者自らネタバレする。
連載物で読者を飽きさせないような仕掛けいうことなんだろうけど、まるで大音響のお祭りを至近距離で見させられているような感じでした。読み終えてなんだかヘトヘト。
この作品をどう捉えたらよいのか分かりませんが、おかしなエネルギーに満ちあふれた一冊でした。ここは確かに魔都でした。続きを読む投稿日:2022.11.04
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