【感想】シャイロックの子供たち

池井戸潤 / 文春文庫
(515件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
88
207
161
21
1
  • クオリティの高い短編。そして全体を通しても満足の読後感。

    とある銀行で働く人々を描いた連作短編集。歯車として生きる者、それに疑問を抱く者、激務の苦しみが報われる者、対照的に散る者…。「銀行員」というエリート稼業の裏にある過酷な業務の描写は、さすがの池井戸クオリティ。息苦しくなるほどのリアリティを持って読者に迫ります。

    そんな話が続くのか…と思いきや事件は起こります。ある女子行員に降りかかった現金盗難疑惑。そこに端を発し、やがて事件は思わぬ方向に。独自に調査していた行員が失踪し、やがて真実が明らかに…。

    出世レースを戦う人間の息の詰まるような思い、それを支えあう家族、そしてミステリー要素。短編でありながら各話が少しずつ繋がり、そして最後に余韻を残す読後感。短編としても、全体を通しても、非常に読み応えのある満足の一冊でした。
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    投稿日:2014.11.22

  • 普通が一番

    銀行を舞台とした連作短編集。たたき上げの誇り、社内恋愛、現金紛失事件、出世競争などなど・・・どこの会社でもありそうな出来事(さすがに人が死ぬことはなかなか無いと思いますが・・・)を各登場人物の生い立ちから描いています。その心理描写がお見事で、手に取るようにわかります。サラリーマンなら「わかる、わかる!!」と同情してしまうシーンが多々あると思います。大企業で出世すれば世間からは勝ち組と言われ、羨ましいと思われるような生活もできるでしょうけど、そのエリートがエリートであり続けるのも大変なんだなぁと思います。やっぱり普通が一番と思える作品でした。普通であり続ける努力はもちろん必要ですが・・・続きを読む

    投稿日:2014.12.05

  • 「半沢直樹」の伏線はここにある

    テレビドラマが驚くような視聴率を叩きだした「半沢直樹シリーズ」。本作は、半沢シリーズと同じ「東京第一銀行長原支店」を舞台に起こる事件が、代わる代わる登場する10人の主人公を通して浮き彫りになっていきます。銀行内で起こった不祥事が、それぞれの立場から探りあい、語られ、うごめく嫌な人間関係が徐々に顕に…。銀行員というと優秀なエリートである印象が強いですが、競争意識の高いエリートが集まる場所だからこそ、内部の人間関係は激しく衝突していくのでしょう。銀行員から作家に転身し、金融機関を熟知している池井戸だからこそ書ける銀行の裏側は、けっこう事実なのかもしれませんね…。(スタッフO)続きを読む

    投稿日:2013.09.20

  • 池井戸潤による連作短編集

    全10話のショートストーリーがいつの間にか絡み合って一つの長編を構成する。各話の主人公は全て異なっているが、物語は基本的に時系列に進み、前の話で描かれた出来事がそれ以降の物語に影響を及ぼしていく。
    語は大田区にある銀行の支店が舞台。営業成績が芳しくないために支店長、副支店長は部下を叱咤激励しながら成績を上げようとする。それはまさしく客のためではなく全ては自分の昇進と会社の利益のため。顧客本位を貫きたい部下との衝突、部下を守るために上司に食ってかかる管理職などいろいろな人間模様が描かれていく。
    悪いヤツは最後まで救いがなく、地道に真面目にやっている人は最後まで信念を持っている。部下への暴力、ギャンブルにハマって銀行の金に手をつける男、架空融資。これでもかと言わんばかりに様々な問題が沸き起こる支店。こんな銀行、ちょっと嫌だなと思いつつ、実際の銀行の裏側って案外こんなものなのかもと思えてしまったり。
    いわゆる勧善懲悪ものではないが、それだけにストーリーがリアルに感じられる。読み始めたら止まらない面白さもさすがである。
    続きを読む

    投稿日:2015.09.20

  • その人の印象というのは、あくまで外から見えているものを自分のフィルターにかけているだけ。

    銀行の一支店を舞台に、登場人物数名の視点から、現金紛失事件と絡めて、一人ひとりの人生が語られる本です。

    なんといいますか、これだけ読むと、銀行(メガバンク)には、こんなに悪い人たちしかいないのか、と思いそうになる感じですが、
    一人ひとりの葛藤には一サラリーマンとして共感出来る部分も多く、ジーンときてしまったシーンもありました。

    すごく幸せそうに見える人でも、実はすごく苦悩していたり、
    ぱっとしない印象の人でも、実はすごく色々考えていたり、
    わからないものだとつくづく思います。

    それが、この本は、現金紛失事件を軸に書かれている為、先を読みたいと思って読み進めるうちに、
    その人間ドラマにひきずり込まれる本でした。
    続きを読む

    投稿日:2014.10.26

  • つながる短編

    ひとつの支店に所属する複数の行員を主人公にした短編が絡み合い、ひとつの物語を構成している。人生いろいろ、なにが正義でなにが悪かは、現実の社会生活においても客観的に分類することは、実際に難しいのかもしれません。主観と主観のぶつかり合い、エゴが渦巻く世界に、私たちは生きているんですね。続きを読む

    投稿日:2015.05.20

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ブクログレビュー

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  • Em

    Em

    映画を見てからおよそ1年、本屋で原作を見かけ、一気に読み終えました。
    映画とは違うと聞いていたので、どう展開していくのかわからず、楽しめました。
    他の作品も読んでみたいと思います。

    投稿日:2024.04.05

  • ゆきの

    ゆきの

    銀行員に限らず、サラリーマンには「会社で働く顔」と「家での顔(父親の顔)」の2つがある。
    道を踏み外していく銀行員の話には、胸に苦々しく迫るものがあったが、家族や子供のために出世したいという気持ちには、少し同情を覚えるものもあった。

    私は働き始めて1年目だが、きっとどこかで甘い誘惑に出会うこともあると思う。その時はこの小説の彼らを思い出して、大切な人に恥じない決断をしようと心に決めた。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.05

  • ぴず

    ぴず

    初池井戸潤作品
    連作と気付かずに読み進めて途中で気づく笑
    パワハラ描写がけっこうキツいので時代を感じる
    銀行員ヤバい人ばっかりの中で女性は悪し様に書かれてはいないけど、それだけ扱いが軽いんだろうなと読めてしまった
    最後はなるほどね、とニヤリ
    続きを読む

    投稿日:2024.03.29

  • 小寅

    小寅

    Amazonオーディブルで聴いた。
    映画は見てない。

    理不尽上司に詰められる、みたいなの、文字で読むのは平気でも、音で聴くとしんどいな〜。
    池井戸潤、最後が尻切れで終わること多い?
    もう少し最後しっかり描き切ってほしい。

    「七つの会議」的な、そのうちひとつの流れになる連作短編集。

    池井戸潤を読んでると、自分がもし銀行員だったら、給与口座は自行でやむを得ないとしても、絶対に他行に口座を作って、そちらをメインで使うと思う。
    何かあるとすぐに自行の人間に口座を見られるの嫌じゃん。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.23

  • momonohanabira

    momonohanabira

    今のご時世ならパワハラでアウトな銀行の1支店で起きた現金紛失事件。毎話登場人物が変わっていく短編なんだけど、話が進むに連れてだんだん繋がっていき、夢中で読んだ。
    ラストである人物の印象がガラッとひっくり返る衝撃に騙された。続きを読む

    投稿日:2024.03.20

  • みー

    みー

    このレビューはネタバレを含みます

    シャイロックとは、シェークスピア「ベニスの商人」に出てくるユダヤ人の高利貸しのことらしい。

    最初は「支店銀行のオムニバス形式のお話なのかなぁ、面白いけど、池井戸潤作品にしては少し退屈かも…。映画になるようなお話かな?」と思いながら読んでいましたが、5話目くらいから、あれ、あれ、あれ?っと、みるみる惹き込まれていきました。
    最後は「んんっ?!そーきたか!!」とまんまと驚かされました(^_^;)
    半沢直樹や下町ロケット的なスッキリ感を求める人にはおすすめできないけど、これはこれで面白かった。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2024.02.18

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