【感想】アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

フィリップ・K・ディック, 浅倉久志 / 早川書房
(686件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
161
267
153
23
4
  • ディックの入門としては、お勧めの作品です

    ディックの小説の中でも、分かり易い部類に入る作品です。

    物語の最初は、アンドロイドを狩ることを主軸に展開をしていきます。そして生物である「人」と、人として人工的につくられた、非生物である「アンドロイド」の何が違うのか?精神世界と現実世界の区別とは?そして人とは何なのかといった疑問を、近未来を舞台に、物語の最後に投げかけてきました。

    独特の世界観と語り口が個人的には、好きな作品です。しかし娯楽作品というよりは、純文学に近いSFといった方が良いと思います。映画の影響などから娯楽作品と考えて読むと、特に後半の部分において、難解な部分があることから、驚く方がいるかもしれません。
    しかし日頃からSF作品を読む方には、面白いと感じる作品だと思います。
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    投稿日:2014.06.08

  • 「ブレードランナー」とは印象がかなり異なります。

    有名な映画「ブレードランナー」の原作としてあがっているP.K.ディックの日本で最も広く読まれている作品。
    正直、おもしろいおもしろくない以前の問題として、何を言いたいのかよくわからない、曖昧模糊とした語り口が私は嫌いです。それでも、いくつか読んだP.K.ディックの作品の中ではこの作品はかなりわかりやすい方だと思います。
    映画との共通点は、プロットの芯の部分と舞台のロサンジェルスの雰囲気と登場人物の名前くらいで、ディックはこの映画の原作があなたの作品ですと言われてもぴんとこなかったのではないかと思われます。

    ただ、小説全体に漂う八方ふさがりな絶望感と数少ない希望という雰囲気はよく表現できていまして、それを楽しむには良い本だと思います。

    しかし、ディックの作品のどこが良いのか、どこがそんなに多くの人を魅了するのか、全然理解できない私でありました。
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    投稿日:2014.04.26

  • 君はもうこの傑作を読んだか?

    放射能の灰によって汚染された世界では、多くの生物が死に絶えました。しかし科学技術は大きく発達しており、人間そっくりに作られたアンドロイドが奴隷として働かされています。奴隷としての環境から逃げ出したアンドロイドを捕まえ、「処理」するのが主人公の仕事。しかし、あまりに人間らしいアンドロイドに触れていくことで、次第に人間とアンドロイドの区別が分からなくなってきます。映画『ブレードランナー』の原作ともなった本作。人間とは何か? その素朴で根源的な問いを、死の香り漂う未来世界で巧みに描き切ります。(スタッフI)続きを読む

    投稿日:2013.09.20

  • 心に残る

    かれこれ20年ほど前に文庫本で読んで、その世界観にとてつもなく影響を受けました。これが電子書籍として読めるようになったことで、また新たな世代の方にも是非広く読んでいただきたいと思います。SF作品の名作として常に名前が挙がるのも納得のものです。
    怪しげな近未来アジアの世界観の中で、ハラハラドキドキのエンターテイメント要素は当然のこととして、生命とは何か?人は肉体と精神とが必須なのか?など若かりし頃は色々と考え込んでしまったものです。
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    投稿日:2013.09.26

  • 一読しただけでは分からない

    これを原作とした映画『ブレードランナー』はSF映画の金字塔と呼ばれているそうですが,何となくそれが分かる内容です.
    アンドロイドを狩る側と狩られる側の心理を多分に哲学的に書いています.

    私の知りうる限りでの比較となりますが,アニメ『攻殻機動隊』が近い世界観をしているのかなと思います.ただ,アクションなどの娯楽シーンはほとんど無く,現代のアニメや映画に慣れ親しんでいる自分としては物足りなさを感じてしまう部分もありました.しかし,物語の奥深さは先述の作品群と比較にならないほどの広がりをもっていると感じます.
    一度読んだだけだと高い評価はできませんが,手元に置いておいて何度も読み返してみたくなる魅力を持った作品だと思います.
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    投稿日:2013.11.10

  • これがわれわれの将来なのか・・・

    火星に居住を求めて移動した人間もいる将来の地球の姿がモチーフである。そこではアンドロイド(ロボット型人間)が、人に危害を加える悪しき存在となっていた。外見上は人間と区別できなくなっており、それを識別できる検査法を駆使して、アンドロイドを撃退する警察官が主人公である。その地球では、世界戦争が勃発し、原爆による死の灰が地球のかなりの領域で覆っている。かなりの生命体が絶滅し、生きながらえた動植物は高価な値で取引されている。主人公の警官のところにも、ロボット型羊を飼っている。移動手段は空飛ぶ自動車であり、SF映画を見ているようである。将来、ありそうな話であるが、なかには非現実的な面もあり、どうも作品に入り込めない気がした。続きを読む

    投稿日:2013.11.10

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ブクログレビュー

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  • q-taka

    q-taka

    「人間」とは何か。
    「アンドロイド」とは何か。
    何が判断基準なのかではなく、どちらも私の中に存在するということか。

    投稿日:2024.04.11

  • さえ

    さえ

    読後もこの世界に浸っている。

    物語の深い意味を知れば知るほど、この作品が名作といわれる理由がわかる。

    現実世界もAIと共存していくうえで、人間の尊厳、感情などはどのように変化していくのかな。

    投稿日:2024.04.03

  • kanjba12

    kanjba12

    アンドロイドと人間の違いは見分けにくいほど、とても似ている。しかし、物事に対する考え方や人間とは相容れない部分も微細に表現していて面白かった。

    投稿日:2024.03.20

  • でんすけ

    でんすけ

    海外SF小説を初めて読んだ。面白かった!
    映画を見てるようだった。考えれば考えるほど深いし、考えれば考えるほど分からなくなっちゃう。

    投稿日:2024.03.09

  • y

    y

    このレビューはネタバレを含みます

    とても面白かった。世界観が好き。

    以下メモ
    ・ギップルという言葉が愛おしい。ギップルとは、ダイレクト・メールとか、からっぽのマッチ箱とか、ガムの包み紙とか、きのうの新聞とか、そういう役に立たないもののこと。
    ・特殊者と書いてスペシャルと読む。俗にいうピンボケ。この呼び方も好き。
    ・情調(ムード)オルガン、共感(エンパシー)ボックスという未来のアイテム。情調オルガンは、人間の情緒をダイアルによって調節できる。共感ボックスは、教祖マーサーと魂を繋げることができる。肉体的にも融合して、マーサーに石が当たると自分も痛い。
    ・マーサー教。マーサーにとってたいせつな生き物のロバとヒキガエルはすでに絶滅している。だからヒキガエルを見つけたときあんなに興奮していたのだと、読み返してみて気付いた。
    ・感情移入は人間だけに存在する。これはすごく面白い。確かに、と思った。ロボットはともかく、動物は共感や感情移入するのだろうか。
    ・アンドロイドがクモの足をもいでいくシーンは言いようのない苛立ちと恐怖を感じた。
    ・主人公のリックは非常に人間らしくて好ましい。イジドアも主人公に思える。憎めない奴で好き。

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    投稿日:2024.03.05

  • k

    k

    フィリップ・K・ディックの長編SF小説。
    1968年刊行。(原作)
    映画版は日本では「ブレード・ランナー」として知られている。

    舞台は核戦争によって荒廃した地球。放射能の死の灰から逃れるべく、人類は高性能なアンドロイドを連れて他の惑星を開拓・移住しはじめていた。
    主人公であるリック・デッカードは植民地惑星から地球に逃亡してくるアンドロイドを処理して報奨金を稼ぐバウンティ・ハンターとして日銭を稼ぎ、妻と生活していた。

    荒廃した地球では、生きた動物が貴重な財産として扱われる。馬や牛にはとてつもない高額がつけられ、人々のステータスとしても機能していた。
    デッカードも羊を一頭飼っていたが、それは電気羊(精巧な電気機械)だった。彼はここに負い目を感じており、報奨金を得て本物の羊を買うことを望んでいた。

    そんな中、8人のアンドロイドが集団脱走し、地球に向かったという情報が入った。
    デッカードは、アンドロイドとの戦いで負傷を負った先輩ハンターの任務を引き継ぐ形で、アンドロイドとの戦いに臨むことになる。

    というのが序盤のあらすじ。

    その後、デッカードはアンドロイドとの死闘に身を投じる過程で、「アンドロイドとはなにか?」「人間とはなにか?」という疑問を持つようになる。

    デッカードのこの疑問は本作を大きく貫く軸となる。高性能で限りなく人間に近づいた(特定の能力では人間よりも優れてさえいる)アンドロイドには、感情もあり仲間を想う気持ちもある。

    またデッカードが遭遇したレイチェルという最新型の女性アンドロイドは、人工の記憶を埋め込まれることで自分自身が人間だと信じ込んでいた。それがデッカードによって、自身がアンドロイドであると暴かれた際にはひどく動揺し、茫然自失となっていた。

    デッカードも読者も、アンドロイドたちのそうした姿を目撃することで、「なにをもってアンドロイドなのか?」という疑問に必然的に突き当たることになる。

    作者のディックは、この疑問に対して「どれほど親切であるかで、人間かそうでないかが決まる」と言っている(訳者あとがきより)。
    つまり、親切にできるかどうかが、人間を人間たらしめていると言う。

    これはある種本質的な答えではあるが、それ以外の解釈もできると個人的に考える。

    人間か、アンドロイドか。この分類というのは結局人間目線の恣意的なものであり、大した意味をもたないと考える。
    つまり、人間とアンドロイドでアクチュエータやコントローラが異なるのは当然で、その境界線はそうした機能的な話よりも、自分自身をどう捉えるかの自意識に依ると思う。極端な話、自身を人間だと捉えるアンドロイドが出現すればそれはもう人間だと言って差し支えない。というより、それを否定することはできなくなる。

    ロボットのメカ的な深化が飽和点を迎える一方で、頭脳にあたるANI、AGIの進化は近年めざましい。本作に登場するレベルのアンドロイドが社会に実装される日は近いだろう。
    そのとき、我々の社会が深刻なモラルハザードを迎えることは間違いなく、それに対して人間たちはどのような結論を出すのか(或いは結論が出ないのか)、非常に興味深い。
    本作はSFでありながら、現代の社会課題とリンクし、ある種の未来予知として機能している。やはり、良質なフィクションは現実のシミュレーション足り得る。

    古い小説であり、設定もありふれたものでありながら、人間の在り方を見直すヒントとなる作品。全体的に陰鬱で、ラストもスカッとしたものではないが、展開が速く読み飽きしない。SFの古典的名作と呼べるだろう。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.04

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