【感想】一九八四年[新訳版]

ジョージ・オーウェル, 高橋和久 / 早川書房
(756件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
283
243
116
20
3
  • ひとかけらの誇りすら奪う暗黒の世界

    1984年と言えば、昭和のバブルな時代を思い出します。けれども、この作品が書かれたのは1948年。ジョージ・オーウェルの描く近未来はどんな世界だったでしょうか?

    世の中は3つの勢力に分かれ、絶えず戦争を繰り返しています。主人公、ウィンストン・スミスの仕事は歴史を書き換えることで、政府にとって不都合な真実はすべてなかったことにされます。昔の方が良い時代だったのでは?などと疑いを持つことは許されず、子どもにすら気を許すことができない社会。
    そんな窮屈な現実から逃れようと、スミスは志を共にする女性との逢引きを重ねるのですが・・・

    この物語の恐ろしいところは、政府に反することを思っただけで、死刑よりも辛い罰を与えられる主人公の末路です。
    読者の心まで持ってかれそうな、ディストピアの傑作。
    現代がここまでひどい世界でなくて本当に良かったです。
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    投稿日:2014.09.26

  • これは読むべし、そして考えるべし。

     ついに読んでしまいました。ずっと手に取るのをためらってた大御所の小説。
     ネットで調べてみると、この本が出版されたのは1949年とのこと。だから書かれた当初は近未来小説と言うことなのでしょう。
     物語上では、50年代に核戦争が起こり、新たな秩序の元、世界が大きく三つに分かれているという設定になってます。話は、第1部から第3部に章立てされ、第1部では、物語上の世界状況が書かれていますが、その世界のスローガンが
     ・世界は平和なり
     ・自由は隷従なり
     ・無知は力なり  であると、示されます。これだけ読むと、ん?なんじゃこれは?てな感じなのですが、読み進めていくにつれ、とんでもない社会であることが判ってきます。
     完璧に管理された完全無欠の社会。子供が親さえ告発することを厭わない相互監視社会。過去さえも書き換えられてしまい、無かったことにされる社会。確かに平和で、そしてルールさえ守れば自由で、とくに困りはしないから、自分の頭では何も考えないし、考える必要は無い社会。一方、戦争は、もっとも経済振興に役立つわけで、実際に戦争をしているかどうかは問題ではなく、また相手がどこであるかも関係なく、絶えず戦争をしていると報道する「党」と称する機関。
     物語では、状況説明の第1部から怒濤の展開となる第2部、第3部へと続いていくわけですが、徐々に背筋が寒くなってきます。
     物語上では、「少数独裁制集産主義」というイデオロギーのもと、社会主義を否定した上で、社会主義的施策を行っているわけで、アメリカでは一時期、反共のバイブルと称されたこともあるそうです。しかし、読んだ限りでは、そんな内容ではなく、むしろ人間の陥っていくであろう危険な状況を描いているような気がしました。
     そして、この物語の中の世界では、誰も幸せそうには見えないのが一番の問題なのでしょう。
     翻訳した髙橋和久氏のあとがきを読むと、この小説は、英国では「読んだふり本」第1位とのことであります。見栄を張るために、そう主張する必要があったのでしょうか。
     実際にこれを読んだと言うことが、威張れることに値するかどうかは判りません。しかし、テロリズムが一般的ではなかった時代に書かれた物語ではありますが、例の法案が審議されている今、その本質をしっかりと吟味せず、ムードに流されて賛成したり、反対したりする前に、読む必要がある小説の一つと言えるでしょう。
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    投稿日:2017.06.01

  • 現代社会に近い社会

    旧ソ連や中国、戦前の日本のような全体主義社会をグロテスクに強調した社会。
    でも近年のTittwerや2chの書き込みを見てると監視しているのが政府か個人の違いだけで、そんなに一九八四年の世界と違いってないんじゃないか、と思ってしまう。続きを読む

    投稿日:2013.10.27

  • 不条理系

    体制が暴走し、体制自体が生き物となり意思を持って動き出す不気味さ。
    まともな人間が体制に取り込まれて部品になっていく過程には、圧倒的な暴力、不条理がある。

    投稿日:2013.11.01

  • 読了した

    ジョージ・オーウェルは戦争を確実に知っている世代で、あきらかに現代人に向かって
    強い言葉でメッセージを送り届けている。体制云々は、僕はあまり意味をなさないと思う。
    戦争により人間性を失った社会、その香りを私たちに教えてくれているのだ。
    名作と言われるものはすべて、読むに値するものということを再認識させてくれる。
    この作品はそんな本だ。
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    投稿日:2014.12.20

  • 1Q84をきっっかけに

    村上春樹の1Q84をきっっかけに、この本を手に取りました。

    もし極端な監視社会だったら。


    というのがテーマのSF小説。
    ライトノベルやエンターテイメント小説を良く読む私にとっては、重ための文体で
    描写も精緻なため、読むのは多少骨折りましたが、リアリティがあり、本当にどこかの
    国でこういうことがあったんじゃないかと感じてしまうほど。

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    投稿日:2013.10.12

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ブクログレビュー

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  • Mio

    Mio

    情報統制、そして思想までを統制するのは、現代でも起こりうる話だと感じた。
    誰もが違和感を覚えておかしくない、覚えているのかもしれない、でも皆何も気にしない様子で従う。そんな中誰ともその思いを共有できないのは恐ろしい。
    圧倒的な服従とは、最後の最後で描写されるのが圧巻だった。
    続きを読む

    投稿日:2024.04.15

  • さんぷう

    さんぷう

    監視社会という世界に抗うことができるのか。
    人間らしさとは?
    そんなことを問いかける名作。
    この時代に現代を予兆するこの世界観を作り出す筆者の先見

    投稿日:2024.04.10

  • Shoichiro Nakai

    Shoichiro Nakai

    1984年を遙かに過ぎた現代でも全く色褪せない。
    寧ろ、情報化社会の現代でこそ気付ける示唆に満ちている。

    投稿日:2024.04.02

  • ワンbooks

    ワンbooks

    この世界が今とどれほど違うと言えるだろう。
    民主主義であるから違うと言えるだろうか?

    世界で戦争は無くならないし
    政治家を選ぶ選挙はしても、官僚や法律を決める権利は
    私たちにはない

    なんで税金が増えたり、減ったように見えたり
    公共料金が上がったり
    給料上がらないのに
    それでも、景気が上がってきてると言われたり
    NISAの枠緩和も、ほんとに私たちのためなのか?

    それを、一様にいい、悪いとメディアも煽る

    もし、それがすべて誰かの
    今のこの国の上層の思惑ならば
    本当に怖い。
    少なくとも、私には疑うことはできても
    それを壊せる頭がない。

    事実、考えることもあきらめ
    仕方ない、なるほど、それがいいのか、悪いのかと
    判断を煽られてる。

    この本の内容が、もっと広く知れ渡り
    民主主義とか社会主義とか
    そんなくくりのいい悪いじゃなくて、
    本当の平等や、自由
    本当に戦争をなくす方法を考えたい。みんなで。

    逆に、テクノロジーの進化した後のSFのディストピアのように、地球であーだこーだ言えなくなる未来になる前に。

    とても哲学的で、SFと思って読み始めたけど
    人類学的でもあり、社会学的でもあり
    歴史学的でもあり、文学的でもあり
    ホラーで、SFでもあるとかんじた。

    ちなみに、
    第1章では、これでもかと、時代背景、世界観を描く。
    しつこいと思いつつ読むけど、そこまで憂慮していたのではないだろうか。当時のオーウェルが。
    第2章は、物語的に光。
    そして、第3章。光からどん底に落とされる。

    だからこそ、この物語が真実味をおび、
    恐怖を感じ、心に残るのだと思う。
    万々歳で終わらないから、小説としては成功だろう
    けど、
    私的には、ひどくしんどかった。

    もう開かないかもしれない。
    動物農場の方が、優しく問うてくれる。
    でも、読んでよかったと間違いなく感じてます。

    SFの部類に入ってるのですが
    思ったのと違って、今でも十分通用する
    小説です。

    続きを読む

    投稿日:2024.03.25

  • 青風

    青風

    スターリニズムをモデルとしてディストピアにおける社会風刺、洗脳過程の傑作。ただ、この本の(一部の)読者が「現代はまさに『1984年』の世界だ」と宣ってるのが鼻につく。それが本当ならそんなこと言えないよ。一からこの本読み直せ。続きを読む

    投稿日:2024.03.24

  • 太郎

    太郎

    1984年、読み終わりました!やっとなんとか、読み終わりました、と言ったところです。時間がかかりました。この本を1日や2日で読み終える方、心から尊敬します。話しの内容としては、評判通り素晴らしいものだと思います。原作は75年前?とかそれくらい以前にも関わらずこの内容を書けている点が高い評価を受けている要因の一つですね。まさにディストピアの脅威が伝わる作品であり、今現在これに近しい状況にある国はあるわけで、日本も例外的ではなく、技術やITの進化により民衆が気付かない中で、国や政治が足を踏み入れてしまう、もしくは既に足を踏み入れている領域があるやかもしれません。どういった主義を唱えて実行する国であっても階級的なものは必ず存続するわけで、民主主義でも当然例外的ではないわけです。現在の日本から見れば、本作のディストピア像は極端ではありますが、そういう考え方や世界が単純なSF世界の物語という事で終わらせてはいけないというメッセージであると感じました。恐ろしやーです。
    ただいずれにしても本作、あくまで私個人の印象としてですが、大変読みづらかったです。唐突に出てくる言葉や、あまり日常的ではない日本語(単語)、文章の作り方など。。。私が普段読みやすい本を敢えて選んで読んでるのかもというのと、翻訳作品を普段あまり読まないので慣れていないせいなのかもしれませんが、、、もう少し読みやすい翻訳に出来ないものですかね。という点で⭐︎3つ止まりとしました。
    続きを読む

    投稿日:2024.03.24

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