【感想】芋虫

丸尾末広, 江戸川乱歩 / 月刊コミックビーム
(33件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
8
11
4
2
0
  • 乱歩の発禁書を描いた怪作

    乱歩ファンとして、「パノラマ島綺譚」の次に購入してみました。
    乱歩の原作は戦時中には発禁になったという問題作ですが、この漫画を見てその意味が分かりました。
    原作は短編ですので、収められたいくつかの作品の中のひとつとして読み、「これも乱歩ワールドのひとつだなあ」という感じで読み進めましたが、この漫画は芋虫1本に渾身の力を込めて描かれたものです。
    ですから、毒っ気が強すぎる感はあります。
    詳しくないのですが、著者もかなりの実力者のようで、乱歩作品と真摯に向き合い、原作に劣らず異様な作品に仕上げてくれました。

    もし乱歩ファンなら、「パノラマ島綺譚」を先に購入してみて、気に入ったら「コレクションのひとつ」としてこちらを購入するのをおすすめします。
    こっちを先に購入すると、刺激が強すぎるかもしれません。漫画には(当然)絵がありますので、小説を読むように空想的に読むことを許してくれません。
    原作に書かれた場面場面を恐るべき画力と構成力で描いた怪作です!
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    投稿日:2014.07.05

ブクログレビュー

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  • zasetu

    zasetu

    個人的に江戸川乱歩と言ったら、『少年探偵シリーズ』や『明智小五郎シリーズ』、『孤島の鬼』などより先に、初期の大傑作である『人間椅子』や『芋虫』――殊に『芋虫』が浮かんできて、その救いようのないラストを思い出し、身震いしてしまうのは私だけでしょうか? 私が初めて乱歩という小説家に感化されたきっかけになった作品は、紛れもなく『芋虫』で、初読の衝撃と感動は今でも忘れられません。

    そんな大好きな作品のコミカライズをあの丸尾末広先生が手掛けているということで、読みたくて仕方なかったのですが、ついにその夢が叶いました! うれしいー
    やはり圧倒的なまでの画力! 痛々しく醜い須永中尉の姿や、そんな彼と時子との官能的な交接、絡み合う植物、不気味な昆虫達・・・・・・と、とにかく一つ一つの要素に業を感じます(美と醜を同居させた離れの描写とか、凄すぎる)・・・・・・! 原作の小説自体はそこまで長い話なわけではありませんが、丸尾版ではふんだんにページを使い、贅沢でデコラティヴな仕上がりになっているのも、この話を残酷劇に終わらせない、どこか儚く耽美なものにしていると思うんですよね・・・・・・。

    やっぱり強烈だったのは時子が就寝中に見た、悍ましい異形や蟲の幻ですね。ぞっとする嫌悪感と、やはりひれ伏されたような「凄み」を見せつけられた感じがします。あとバナナ(笑)

    追記:時子が須永中尉の目を抉る場面を襖から黒猫が覗いてるのって、もしかしてポーの『黒猫』を暗示してるのかな?
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    投稿日:2021.11.11

  • iroka

    iroka

    絵が美しく、どうしようもないこのお話と丸尾末広の描き方の相性が良いと思った。
    突然のグロテスクなシーンには驚いたが、虚しさ、切なさが独特のタッチで助長されていて非常によい。

    投稿日:2019.05.07

  • ノーネーム

    ノーネーム

    渋谷の漫画サロントリガーにての読了。全体的に漂う官能的な雰囲気がとても素晴らしいと感じました。別に奥さんは好みでもないし普通の昭和の専業主婦なのだけれど、支配することの快楽に溺れる女の顔はなにか胸に訴えかけるような美しさと危なさがあるなと感じました。最後のラストシーンはドロドロとした展開で終わるのか?と思っていましたが、切ないラストシーンで良い意味で期待を裏切られました。続きを読む

    投稿日:2015.12.08

  • あかずきん

    あかずきん

    あの乱歩の短編を、これ以上ないほどに濃く煮詰めたエッセンスのような。須永中尉の表情の微妙な変化が見事。あの3文字が迫ってきて目にはりつく。

    投稿日:2015.11.28

  • いたち野郎

    いたち野郎

    巷ではエログロナンセンスなんていいますが、ナンセンスかどうかはともかく、エログロの代表的テーマでしょうか、芋虫。小説のあとがきで、著者いわく「反戦をテーマにしてない」的なことが書いてあった記憶がありまして、つまり退廃的なエログロを混じりけなく描いたものであれば、その意思を反映したのがこの漫画なんじゃないかと思います。続きを読む

    投稿日:2015.04.12

  • ohsui

    ohsui

    『パノラマ島綺譚』に続いての江戸川乱歩×丸山末広コラボ。
    前作よりも、エロ・グロ・ナンセンスが強くなっています。

    時代はロシア戦争を経てのシベリア出兵の後、
    戦傷で両手両足と、声を失った兵士とその妻が主人公。

    貞淑な妻の中に潜む嗜虐的な性癖、、
    不具となった夫のやるせなさと、抑えきれない欲望、

    それぞれが徐々に“壊れながら”つまびらかにしていく、
    そんな人の“欲望”の描きようが、なんとも衝撃的です。

    原作自体が、いろいろと衝撃的な内容ですが、
    なんとも上手く表現されているなぁ、、と。

    原作を初めて読んだ時にゾッと感じたその世界観、
    それがそのまま伝わってきたと感じています。

    冒頭の「許す」との言葉、哀しいほどに痛く伝わってきました。
    続きを読む

    投稿日:2014.05.12

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