【感想】宇宙のランドスケープ 宇宙の謎にひも理論が答えを出す

レオナルド・サスキンド, 林田陽子 / 日経BP
(7件のレビュー)

総合評価:

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  • 宇宙観がきっと変わります。今までの宇宙論本にがっかりさせられた方にお勧めです。

    決して簡単な本ではありませんが、この種の本にありがちな、途中でギブアップせずに最後まで読み切れました。本当に理解できたかというとまだまだ私の理解力では手が届かないところにありますが、今まで全く理解できなかった「ひも理論」や「インフレーション」の本質的な考え方にようやくとっかかりができました。今までの自分の宇宙観は明らかに変貌しました。この宇宙に人類だけがいるのか、いないのかは些細な問題でした。並行宇宙の存在を感じる素直な感覚が養えます。続きを読む

    投稿日:2013.09.25

  • 宇宙のランドスケープ 宇宙の謎にひも理論が答えを出す

    著者は南部陽一郎と共にひも理論の創始者である。超一流の理論物理学者が一般向けに書いた本。サスキンドは切れ者として通っている南部と同じ考えに至ったことを誇りに思ったと書いている。これを読んで南部さんは偉大だと思った。 著者は精悍な顔つきで、ほぼスキンヘッド、髭を蓄えている、物理学者としては珍しくコワオモテの人だ。本書の序では、「本書は初心者向けに書いたけれども、知的な成長の意欲もない見物人のためのものではない」とそれなりに努力することを要請している。

    本書の骨子は、以下のとおりである。
    現代の理論物理学では、物理定数の組み合わせ10^500(10の500乗)があり得ると考えられている。一方で、我々の暮らしている宇宙は生命が生まれ得る様に全ての物理定数が絶妙に調整されている。例えば、宇宙定数は真空エネルギーが小数点以下119桁の単位で相殺されている。これは、普通あり得ない偶然としか思えない。 以前はこの問題について、理論が発展すれば、物理定数もそれぞれが現在の値を持っている必然性が導かれるだろう、という楽観論(希望)があったが、それは望みが無いことが分かった。

    一方、ランダムな物理定数の組み合わせを持つポケット宇宙はインフレーションにより無数に発生している。無数に発生するポケット宇宙(これを著者は「メガバース」と読んでいる)の中で、我々のような知的生命体が発生できるものはごく僅かであり、物理定数が絶妙に調整されているのは、我々が存在しうるのはそのような宇宙だけだからである。(これを「人間原理」と言います。)

    サスキンドは可能性のある物理定数の組み合わせを「ランドスケープ」と読んでおり、本書の思想をひとつのスローガンで表すならば、「可能性のランドスケープを実在のメガバースが満たす」である。

    (サスキンドは本書で可能性のランドスケープを満たすもののもう一つの可能性として、エベレットの平行宇宙論も挙げていますが、これについて説明すると長くなるので、やめます。興味があったらWikipediaで「エヴェレットの多世界解釈」を見てください。これで一冊の本になる驚くべき思想です。)

    サスキンドは、人間原理が宗教的な思想(創造論)と結びつけられることを厳に警戒しており、本書の思想は真に科学的なものであることを主張している。一番の難点は我々が他の宇宙を認識することができず、証明方法が分からない事である。

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    本書を読んだ感想は、この問題については、知っていたが、「理論が発展すれば、物理定数もそれぞれが現在の値を持っている必然性が導かれるだろう」と思っていたのが、その望みが無いことを知り、メガバースはほぼ間違いなく存在するとの強い主張に押された。「ああ、そうだったんだ」という感じ。

    また、著者が量子力学のコペンハーゲン解釈よりも「エヴェレットの多世界解釈」を支持している事に意外性を感じ、この世界が更に意外な性質を持つ事を想像した。「エヴェレットの多世界解釈」は眉唾っぽく思っていたので。

    可能性のランドスケープは、ずっと前からダーウィンの進化論について、生物が獲得しうる特性を二次元の地形の様に考えられ、実際に獲得する特性が「暫定的な谷間」である、と言うような事を考えていたので、違和感は無かった。

    最近観測や実験物理学の進展が目覚ましく、現在は検証不可能と思われている事も意外と証明される可能性がある。例えば、メガバースに関しては、素粒子としては唯一重力子のみがブレーン宇宙間を行き来出来、影響を与えうる事から、ダークエネルギーの正体が平行宇宙の重力に由来するとの考えがある。重力が他の宇宙を認識する手段になる可能性がある。

    死ぬまでにどんな事が分かるのか、本当に楽しみだ。長生きせねば。走ろう!(そこに行くか?)
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    投稿日:2013.09.24

ブクログレビュー

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  • 加藤 玄一郎

    加藤 玄一郎

    このレビューはネタバレを含みます

    この世の物理定数は、なぜこの値なのか。何故、生物が誕生し得る組み合わせなのか。究極の問いとも言えるその謎に、ヒモ理論を用いて迫る。

    筆者は南部陽一郎とともにヒモ理論の礎を築いた先駆者。触れ書きの通り数式は使わず説明してくれているのだが、なにせあまりにも日常とかけ離れすぎていて、想像つかない。その非日常を求めて読んでいる節もあるが。

    10の500乗もあるポケット宇宙、d-ブレーンに巻き付くプランク長さのヒモたち、そのヒモも11次元でないと数学的に矛盾してしうが、3次元空間に収まるために余剰次元はプランク長さまで巻き上げられている…

    宇宙という広大な領域を扱う学問と、観測できない最小の現象を扱う量子力学が表裏一体なのはロマン。そして、この世はメガバースというポケット宇宙の集まりのうちの一つに過ぎないという理論は支持を集めつつも絶対に観測はできないという、ロマン。

    宇宙に興味がある人は読んでみて下さい。

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    投稿日:2021.10.25

  • bax

    bax

    [ 内容 ]
    ひも理論とインフレーション理論が結びついた驚愕の宇宙像。
    無数の種類の宇宙が無限回出現する。

    [ 目次 ]
    ファインマンが描いた世界
    物理学の難問中の難問
    ランドスケープを転がる宇宙
    唯一性とエレガンスの神話
    晴天の霹靂
    ありそうもない偶然を解き明かす
    ゴムひもで動く世界
    ひも理論の復活
    理論の力だけでどこまで行けるか
    ルーブ・ゴールドバーグ機械の背後に
    泡を吹き出す宇宙
    ブラックホール戦争
    要約

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]
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    投稿日:2014.10.27

  • 澤田拓也

    澤田拓也

    ひも理論の重鎮レオナルド・サスキンドのメガバースと人間原理に関する最新の宇宙論。

    リサ・ランドールの『ワープする宇宙』やブライアン・グリーンの『隠れていた宇宙』など、最新の宇宙論が最近日本でも多く紹介されている。ヒッグス粒子の発見の話題もあったからだとも思われるが、これらの議論がこの世界の存在の究極の根拠について考えを巡らせている多くの人の琴線に触れるものであるからだということもあるだろう。科学書翻訳で多くの信頼を得ている青木薫さんも、このテーマで『宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論』という自著を出しているが、あえて翻訳だけでなくオリジナルの本を出してみようと決めた気持ちがわかるような気がする。

    著者は、「ランドスケープ」ー 考えられる世界すべてを表す数学的空間を意味する ー という概念を持ち出し、このわれわれが存在する宇宙が無数のメガバースの中のひとつであるとして、単純な人間原理を克服しようとする。これは、自然定数がいくつもの微妙な値を取る根拠や複雑で無根拠な素粒子の標準理論がなぜそういうものであるかについて別の視点から説明を試みるものだ。また、量子力学の確率的解釈(コペンハーゲン解釈)から、分岐し続けるメガバースの文脈で捉えるものでもある。著者の専門であるひも理論も、そういった考えと整合性を取ることで根拠が作られると考えられている。

    著者は、宇宙についても進化論のロジックが働いていると説く。ダーウィンが提唱した進化論のコアのロジックは、生物学以外にも企業論などいろいろな分野にも適用されるが、宇宙論にまで適用されるものかと少々驚いた。進化論のロジックは、複雑なものが作り上げられるための必須の要件なのかもしれないと思うと腹に落ちた。メガバースの理論は、われわれが住む以外の宇宙の観測不可能性など、実証的に証明できない点が問題にされるが、現在では多くの科学者からその考え方はサポートされているようだ。この後の研究成果も、翻訳されたわかりやすい言葉にて触れさせてもらえればと思う。
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    投稿日:2014.03.30

  • Lyrica

    Lyrica

    http://triquetra0726.blog130.fc2.com/blog-entry-267.html

    http://triquetra0726.blog130.fc2.com/blog-entry-285.html続きを読む

    投稿日:2014.02.05

  • 花和尚

    花和尚

     物理学が研究するのは通常は我々が住む宇宙の物理である。それ以外のことについて考えることは興味の対象ではあっても、学問として研究の対象ではなかった。それがこの宇宙が何故もかくまでに人間が住む必要条件をまるで奇跡の連続のように絶妙に設計されているのかという疑問を生じさせた。
     これには「人間原理」という思考があり、「どうして人間に好都合な世界なのか」を考えるのではなく、「好都合だから人間が存在した」と考える。これは一種思考の限界を示すものであり、多くの物理学者は「人間原理」で理解をストップさせるのを生理的に嫌悪した。それは「人間原理」がそれ以上に何も予測することも発展することもないからである。
     しかし、「人間原理」はこの従来の文脈からではなく、物理の研究の延長上に現れることになる。それはこの宇宙の構造から分かる存立基盤を考慮すれば、ほかの形態の宇宙も存在可能性があるであろうということである。つまり重力や電磁力、強い力、弱い力、空間次元、宇宙の形、ダークマターなどが異なる大きさや強さで存在することもあるだろうということ。結果、そこでは知的生物は発生することは難しいが、この宇宙はその無数にある宇宙形態のなかで知的生命体が存在しうる絶妙の構造になっていたし、また宇宙形成の歴史も奇跡的に知的生命体が発生する軌跡をたどった。
     宇宙があたかも地球に浮かぶ様々な国々のように、いろいろな場所にいろいろな種類の宇宙が配置し、動いている世界観がランドスケープ宇宙である。
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    投稿日:2012.04.29

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