ヒロシマを暴いた男 米国人ジャーナリスト、国家権力への挑戦
レスリー・M・M・ブルーム(著)
,高山祥子(翻訳)
/集英社文芸単行本
作品情報
原爆の正体を世界中に知らせた、一人の記者がいた。1946年8月、とある雑誌の特集記事にアメリカ中が騒然となった。第二次世界大戦でアメリカに勝利をもたらした広島と長崎の原子爆弾が、1年後も市民に後遺症と死の苦しみを与えていることを、人々は全く知らなかったのだ。のちに世界的名著となったルポ『ヒロシマ』は、いかにしてアメリカ軍やGHQの隠蔽と検閲をすり抜け、世に知られるに至ったか。小説でピューリツァー賞を受賞しながらも才気ある記者として活躍したジャーナリスト、ジョン・ハーシーと雑誌『ニューヨーカー』の軌跡を辿る。
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商品情報
- 著者
- レスリー・M・M・ブルーム, 高山祥子
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文芸単行本
- 書籍発売日
- 2021.07.15
- Reader Store発売日
- 2021.07.15
- ファイルサイズ
- 3.8MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (11件のレビュー)
-
お恥ずかしながら原子爆弾の影響について米国もGHQも報道を規制していた、ということを本作を読むまで知らなかった。アメリカ政府的には非人道的なナチスドイツを倒した国が非人道的な兵器を用いたと言いたくなか…った、マッカーサー的には日本を倒したのはあくまで自分であって自分の預かり知らないところで開発された強力な兵器のことは伏せておきたかった、ということらしい。従って原爆投下直後に広島や長崎を取材した記者は何人かいたもののそれが報道されることはなかったのだそうだ。雑誌「ニューヨーカー」の編集者達は何か不自然なものを嗅ぎつけピュリッツァー賞受賞作家を広島に送り込み通常爆弾と異なり爆発後も苦痛を与える兵器でありそれを残酷にも行使したということを暴かせる。ニューヨーカーという雑誌はどちらかというと軽めの小粋な内容が主な内容というイメージなのだが通常の連載記事を全てやめて広島の取材記事だけを載せた号を突如出版しこれが大スクープとなったものらしい。その影響は大きく、トルーマン大統領は直接指示をして退役将軍に反論記事を書かせたほどで核の恐怖、ということが広く知らしめられたのはこの記事のおかげらしい。既に始まっていたソビエトとの冷戦において優位に立てる、という米国の政府や軍の思惑の変化ということも多少はあっただろうが報道の存在意義や良質なスクープの重要性ということがよく分かった。非常に面白かった。おすすめです。続きを読む
投稿日:2021.10.26
タイトルに「暴いた」とあり、何がなぜ隠されていたのか興味を持って手に取った本。
1946年8月29日に発売された雑誌「ニューヨーカー」に掲載された、ジョン・ハーシーによる「ヒロシマ」という記事。広島…への原爆投下とその影響を、6人の広島の住人の証言によって紹介したもので、今でも読み継がれている。その舞台裏、ハーシーがどんな思いで書いたのか、当時のアメリカ、世界に与えた影響が描かれている。
当然、この本の中で紹介されたハーシーの記事はごく一部だが、それでも6人の語る原爆投下から直後の広島の様子は衝撃的。あらためて、原爆という兵器の特異性、それが使われて、人間自らがこれだけの被害を生み出した、ということを忘れてはいけないのだと感じた。
アメリカは投下直後から、原爆に関する報道を厳しく規制。非道な武器を使用したという批判を避けるため、そしてその独占状態を保持するために。アメリカ国内では、放射能の余波を否定し、放射能による被害を伝える記事は、日本が被害者意識を煽るためのプロパガンダだと主張していた!非道なファシズムを倒した民主主義のリーダーであるアメリカが、非人道的な兵器を使ったことは隠さなければいけないと。
厳しい取材規制の中、ジョン・ハーシーは広島に入り、アメリカ人牧師の紹介で、6人の被爆者にインタビュー。みな、ハーシーの真摯な態度に動かされたという。単なるスクープを狙った訳ではなく、非人間的な恐ろしい数字の裏にある陰惨な現実を読者に実感させることが重要だと考えていた。さまざまな戦地の取材を通して、どんな国籍の人間でも、敵や捕虜を同じ人類の仲間と見るのをやめた途端に蛮行に走るのを目撃した。人類が生き残るためには、戦争が核兵器によるものになった今、ふたたび人々が人間性を認め合えるかにかかっていると感じていたと著者は述べる。
ハーシーは、読者それぞれが、その時を感じることができるように、そして核戦争の驚異を自分のこととして感じてもらえるよう、6人が語ったことを淡々と記事にすることを選んだ。その分、社会への影響は大きかったという。ハーシーだけでなく、この記事を、この形で発行した「ニューヨーカー」の編集長・ハロルド・ロスと副編集長・ウィリアム・ショーンの決意と働きもすごい。続きを読む投稿日:2022.12.11
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