この作品のレビュー
平均 3.5 (47件のレビュー)
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エキセントリックなルックスから、色モノ的に見られがちな著者であるが、権力支配、メディア支配に対する高い問題意識を持った硬派な思想の持ち主である事が分かる。
本書を読んだ事の最大の収穫は、哲学者・心理…学者のミシェル・フーコーによる、バイオパワー(生一権力)という概念を知ったことだろう。フーコーの「監獄の誕生」という著書の中で、提唱された概念であり、”監視されているという暗黙のプレッシャーによって、囚人は実際には監視されていなくても監視されているかの如く振る舞う”現象である。監視されているというプレッシャーが、模範的な行動を促すということだ。本書のテーマである、電通という広告代理店を通じたメディア支配の本質は、そうした業界内にある暗黙のバイオパワーによってもたらされており、誰か特定の個人や集団の意思によって直接的になされているものではないということだ。
この概念は、戦時の日本に醸造された国民一眼となった戦争協力の空気が説明できるであろう。憲兵による監視というプレシャーで、国民の本来の意思とは裏腹に、徴兵の赤紙を受け取るとバンザイをし、それに対して賛同しなければ非国民のレッテルを貼られていた当時の空気は、正にバイオパワーであろう。更に古く遡れば、豊臣秀吉時代の五人組制度や、村八分などといった地域社会的慣習も、バイオパワーという概念で説明がつく。
本書の中で、電通の歴史を紐解くくだりで、戦後のGHQ、CIAとの関わりが大胆な仮説を元に提示されている。
敗戦後のGHQによる、WGIP(War Guilt Information Program)によって、敗戦は日本の指導者が誤った選択をした結果であり、米国は悪くないという価値観が日本人に植え付けられたということだ。そして、電通がこのプログラムの遂行に大きな役割を果たしたということだ。あながち、否定できる話でもないだろう。一方、書中、アメリカのメディア支配の陰謀的な話が出てくるが、このへんは少し眉唾もののような気がする。オバマ大統領が、ザッカーバーグやスティーブ・ジョブズなどのアメリカの主要IT企業のTOPを食事に招待したという話が、アメリカの外交的覇権についての協力を求めたという話は飛躍しすぎであろう。上場企業であるそうした会社のTOPをそれだけの大人数を集めて、国家の利権について協力を求め、それを全員が快諾するなどという発想は、かなりの暴論だ。経済学的な、企業と個人のインセンティブを考えると機能するとは考えにくい。こうした話も混ざるから、本書や著者が胡散臭く感じるのであろう。
一方、本書の主役である電通であるが、監査役に、元大臣、公正取引委員会、銀行役員をそれぞれ迎え入れているという指摘がある。政治、行政、金融の分野からの人脈を確保し、うまく通ずるというしたたかな戦略である。この程度の事は、実際どの大手企業もやっていることであろう。
電通のメディア支配構造は多かれ少なかれあると思われるが、冒頭に指摘されている通り、何らかの意思があるものではなく、バイオパワーによって暗黙の元に存在する掴みどころない空気のようなものなのであろう。著者が巻末で提唱しているように、電通の分割、メディアの代理と広告主の代理を禁止するなどという政治、立法的な解決策が、こうした状況を変えるであろうが、実現は著者も指摘しているように簡単ではないだろう。続きを読む投稿日:2018.10.08
正しいかは分からないし割と当たり前といえば当たり前の話だけども、メディアと言うバイオパワーが大きく働いている業界から出てくる情報に対して疑ってかかる姿勢は忘れてはいけないなと改めて思わされました。
投稿日:2021.12.31
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