人に強くなる極意
佐藤優(著)
/青春新書インテリジェンス
作品情報
どんな相手にも「ぶれない」「びびらない」「怒らない」――。ビジネスでも人生でも、人と相対したときにどう振る舞えるかが結果を大きく左右する。いつでも最高のパフォーマンスをするには、どんな心持ちでいることが重要なのか。外国の要人、日本国首相、そして特捜検察などに対してギリギリの交渉力を発揮してきた著者が、現代を“図太く”生き残るための処世術を伝授する。
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商品情報
- シリーズ
- 人に強くなる極意
- 著者
- 佐藤優
- 出版社
- 青春出版社
- 掲載誌・レーベル
- 青春新書インテリジェンス
- 書籍発売日
- 2013.10.01
- Reader Store発売日
- 2016.06.10
- ファイルサイズ
- 0.6MB
- ページ数
- 216ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (165件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
経済・社会・国際情勢が激動する現代社会を乗り切るには、そうした状況に対応できる人間力を強化することが必要である。こうした人間力を高めるために、「怒らない」「びびらない」「飾らない」「侮らない」「断らない」「お金に振り回されない」「あきらめない」「先送りしない」という8つのテーマについて、著者の考え方・基本技法を紹介したのが本書である。各テーマの中で特に参考となった事項は次のとおり。
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「怒らない」
怒るということは、単なる感情の発露、危険を避けるために行動を止めるための怒り、場を収めるための戦略的なお芝居の怒りと、3種類の怒りの種類がある。周りで怒っている人がいる場合でも、ただ怒られたことは嫌だと避けるのではなく、どの怒りの種類なのかを分析して対応を考えることが必要とのこと。もちろん、単なる感情の発露の場合は、避けることが肝要である。また、自分が管理職になった場合は、危険を避けるために行動を止めるとか、場を収めたり嘘をつかせないなどの場合については戦略的に怒るということも必要である。ただし、立場の弱い人に自分の立場の強さを背景に怒るのは絶対に避けるべきこと。また、怒りの感情が湧いた場合は、怒りの感情が湧いた原因(嫉妬、コンプレックス、焦り)などを客観的に分析して、対応することが重要であると著者は説く。こうした分析をし、感情を昇華させるには、代理経験として小説やドラマを見るなど、芸術に触れることが有効であるとのこと。
「びびらない」
人間の社会では、びびらせて行動をとらせるということも多々あるもの。資本主義経済においても、健康などに対する不安をあおって商品を売るといった、フィアメッセージが横行している。不安になったりびびったりすると、冷静な判断ができなくなる。こうした中で「びびらない」胆力を身に着けるには、相手や対象を知り、相手の本質や意図を見極めることが重要である。人間はよくわからないもの、不可解なものに対してびびるものである。このため、相手や対象を知り、相手の内在的論理を知れば、相手が何を言おうが、どんな威圧をしてこようが、冷静に対応できるようになる。また、小説や映画などで代理経験を積むことも有効である。代理経験も含めた経験を重ねると、びびるような場面に出くわした時でもその状況を分類・類比し、今後の展開などを予測することができ、落ち着いて対応することができる。
他方、理屈や道理が通じない相手や、自分の能力では対応できないことには、びびって撤退するしかない。撤退のラインを見極めるためには、普段から負荷をかけて自分の能力の限界を知っておくことも重要である。
「飾らない」
飾るというのは、自身の優越欲求や承認欲求を満たすための行為である。こうした欲求は、封建制から近代社会へ移り変わる中で、身分の代わりに競争をして自分の位置を確かめるという社会に移り変わってきた中で強化されてきたものである。これらの欲求を利用されると、マインドコントロールされることもあるので注意が必要。仕事の局面などでは、自分の実力を素直に認め、分からないことは分からないと伝えて教えを乞うという態度が必要であり、そうした真摯な態度が仕事における飾らない関係を作ることにつながる。そして、飾らないためには、自分の素の軸(国や民族、故郷や家族、信条、哲学、など)がしっかり分かっていることが必要である。
「侮らない」
人間は、上手くいっているとき、得意なことをしているときほど、人や仕事を侮り、取り返しのつかない失敗をしてしまうものである。このため、侮って失敗した事例を扱った書を読むことで代理経験を積むということや、内省ノートをつけて周囲からの指摘を客観的に分析して自分の侮りに気づく努力をするということが必要である。
「断らない」
断らないとは言い方を変えれば、受け入れるということである。自分とは異質な事柄を受けいることは、自分の価値観が棄損されなどのリスクも伴うが、異質な存在や価値観と触れることで、タフさや可能性を広げることができ、成長のきっかけとなる。
「お金に振り回されない」
資本主義社会の特性を知り、お金に振り回されないスタンスを取ることが重要。
「あきらめない」
現代社会に通底する「あきらめない」という価値観は、西欧の目的論的な考え方に端を発し、日本では明治維新以降に定着した価値観である。「あきらめない」というからには、その目指す物事の完成形(終わり)が明確になっていることが必要である。そうした完成形が曖昧なままあきらめないでいると、執着の泥沼に陥り、身も心も破綻する。このため、何か目標設定をする時は、実現可能な完成形がイメージできるものにする必要がある。そうした、完成形の明らかな目標を複数設定し、期限を区切って取り組んでみることが、自分を管理する上で重要である。
「先送りしない」
決断・判断するリスクと、判断を先延ばしにするリスクを天秤にかけて、今判断するリスクの方が高いと考えているから先送りしてしまう。何を怖いと考えるか、リスクを冷静に合理的に比較することが必要。うつ病やその傾向のある人は、「もう終わってしまった」という「祭りの後」的な時間意識を持っている人が多いとのこと。この感覚が強いと、ある時点から先は何をやっても無駄だ、やっても仕方ないという気持ちになってしまい、何もできなくなるとのこと。こうした感覚は、完璧主義のかたくなさが極端に表れたものでもある。しかし、現実はかなりフレキシブルなところもあり、一つがうまくいっていなくても、べつのところで補えば、全体として何ら問題がないことの方が多い。こうした感覚の硬さをほぐし、取り除くことが、先送りしないための一つの心の持ちようである。
(感想)
社会で生きるとは、人と相対して関わって生きていくことであり、人と適切に関わっていくために必要なテーマのノウハウの詰まった本である。「怒らない」で説明のあった、怒りの種類を分析して対応する方法は、怒られて落ち込むしかできない傾向にある自分が、客観的に怒られたことを分析して、受け流す助けになると思う。「びびらない」で説かれた相手の内在論理を知り対応するということや、自分の能力を把握して対応するということが参考になった。「あきらめない」においても、やはり目標として適切な完成形を設定することの重要性が解かれていた。また、「先送りしない」で言われた「祭りの後」的な時間意識は非常に強いので、そうした感覚をほぐして一つがうまくいかなくても別のところで補うこともできる、まだ間に合うという感覚を身に着けていけたらと思った。
全体を通じて、内省的に自分を客観的に振り返ること、読書や映画・演劇などの芸術のもたらす代理経験という効用を改めて認識することができた。何故、人間にとって「物語」「芸術」が必要なのかということも腑に落ちた。そして、今の自分が当たり前に持っている価値観や欲求も、社会の在りようと共に時代によって変遷しているものであるということが述べられており、自己を相対化するという視点を得ることができたのは大きな収穫であった。投稿日:2021.10.07
タイトルや目次が魅力的。
内容は薄い。一般論の後に自慢エピソードか鈴木宗男ラブの話が書かれていて個人的に受け付けない。
ただ、ロシアという大国を相手にされていただけあり、稀に気づきとなる考え方もあった…、続きを読む投稿日:2023.08.04
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