原発安全革命
古川和男(著)
/文春文庫
作品情報
原発の安全性には疑問符がつきまとう。とはいえ、すぐに原発をやめるわけにはいかない。現代社会にエネルギーは不可欠で、今の技術レベルの太陽光や風力発電では、とても原発に代替できないからだ。が、このジレンマは解決できると著者は言う。燃料形態を液体に代え、ウランを燃料とすることをやめ、炉を小型化することで、原発は格段に安全になるのだ、と。この方式は今、世界のエネルギー関係者に「福音の原発」として注目されている。
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商品情報
- シリーズ
- 原発安全革命
- 著者
- 古川和男
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2011.05.20
- Reader Store発売日
- 2014.08.08
- ファイルサイズ
- 8.4MB
- ページ数
- 247ページ
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この作品のレビュー
平均 3.4 (7件のレビュー)
-
十年前の『原発革命』の新版。トリウム熔融塩炉のススメ。ウランの次に重い天然の元素トリウムを,熔融塩という液体の形で燃料として用いる原子炉。著者によると,安全で小型にでき,兵器への転用も困難。
トリ…ウムを含む液体の熔融塩を,黒煙を減速材とする炉心で核分裂させる。熱をもった熔融塩は炉心から配管を通って熱交換器に向い,二次冷却材と熱交換。二次冷却材が次の熱交換器で水を蒸気にしてタービンをまわす。熔融塩が炉心と熱交換器の間を循環。
燃料のトリウム232は核分裂性ではないが,中性子を吸収したウラン233が核分裂する。低濃縮ウランを燃料とする従来の炉では,運転によってプルトニウムができてしまうが,トリウム炉ではできない。α線を出すプルトニウムは遮蔽が容易で兵器(核爆弾)転用可だが,トリウム炉とは無縁。
著者はしきりに,原発は核化学反応プラントだから,プラントらしく反応は液体中で起こすのが合理的と主張してるけど,そんなものなのだろうか。固体核燃料だと出力の変動を避けなくては経済的にうまくないが,液体燃料ならその心配はなく,出力可変になるらしい。
ただ,トリウム232から生じるウラン233には,ウラン232が不可避的に付随して,それが大量のγ線を出すらしい。著者はそのためにテロリストに盗難されにくい,とか核兵器にしようとしても被曝して無理とか,むしろメリットとしている。遠隔操作で安全とも。
これには異論もあるようで,短寿命の核分裂生成物が出す放射線が大量なので,それをいかにして閉じ込めるかというのが難題らしい。いくら炉心を常圧にできるといっても,やはり安全に運転する技術を確立するのは難しそう…。
異論は例えば→Togetter - 「へぼ担当氏によるクローズアップ現代「トリウム最前線」感想」 http://htn.to/8Ck4tK続きを読む投稿日:2011.11.24
このレビューはネタバレを含みます
2011年(旧版2001年)刊。著者は元東海大学開発技術研究所教授(NPOトリウム熔融塩国際フォーラム理事長)。
レビューの続きを読む
まず初めに、本書が掲げる核分裂エネルギー利用の発電システムは既存の原子力発電とは…大きく仕組みが異なる点、詳細に論じられる発電システム(化学プラントそのものと著者は言うが)の安全性の説明の是非を正す能力は私にはない。実際、発電プラントの説明は理解不可能な部分も多かった。
その中で、トリウム熔融塩を利用する点、液体核燃料である点、常圧に近い環境で運用される点、既存プルトニウムの減少を可能にする点。そして小規模発電を可能にする点は印象的である。
ただし、経済的合理性。すなわち、現実に稼働することなしに経済性を正しく図ることは困難である。本書のこの点の指摘は豊富とは言えない(もっともプルトニウム減少が可能ならば、多少の非経済性は目を瞑る必要があるかもしれないが)。
もとより究極は再生可能エネルギーへの転化を著者も希望しているようである。が、それが50年~100年先に主流になると見立てているのが特徴なのだろう。
是非、核物理学と発電システムに詳しい人に解説してもらいたいけれど…。
既存の電力会社の影響下にない局、Eテレ「サイエンス・ゼロ」辺りで取り上げないかなぁ。続きを読む投稿日:2018.04.20
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