復興政策をめぐる《正》と《善》:震災復興の政治経済学を求めて1
鈴村興太郎(著)
,須賀晃一(著)
,河野勝(著)
,金慧(著)
/早稲田大学出版部
作品情報
危機における政策が満たすべき条件とは何か。被災者の「日常」を再建し、人々の権利・主体性を大切にしつつ、長期にわたる復興政策を正しくつくりあげるために不可欠の共通理解を探る。経済学・政治学をはじめ、現代の哲学・思想の原点に遡って徹底的に考える。
第1章 危機対応のための公共的選択の課題――《次善》の経済政策の構想と実装(鈴村興太郎)
1 危機対応のための公共的機構の課題――東日本大震災の教訓
2 社会的選択機構の設計と実装――標準的理論の点検作業
3 《最善》の性急な追求よりも《改善》の段階的な模索を
4 被災地を訪ねて考えたこと
第2章 政策決定の前提を疑え――復興政策の評価における価値基準(須賀晃一)
1 市場崩壊を生き残る倫理
2 政策評価の観点・情報的基礎・価値基準
3 功利主義の展開
4 復興政策を評価し選ぶための基準
まとめ:政策決定の前提を疑え
第3章 復興を支援することは,なぜ正しいのか――哲学・思想の先駆者に学ぶ(河野勝・金慧)
1 問いの構図
2 不運と不正義のあいだ――シュクラーの問題提起をめぐって
3 状況 vs 選択?――ロールズと「運の平等主義」について
4 憐れみか同情か――アーレントの感情論を手がかりに
5 結 論
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この作品のレビュー
平均 3.5 (3件のレビュー)
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某妻に貸してもらう。いろいろ考えるところあり。とくに第三章の規範理論の話は関心が共通するところが多かった。アレントの同情の話も参考になったが、近年の道徳心理学や社会心理学の話を持ち込むともっとおもしろ…くなった気がする。続きを読む
投稿日:2018.10.13
復興でアマゾンで検索して、購入。
この早稲田大学ブックレットはあたりはずれが大きいが、これはあたり。
いわゆる政治経済学者が、復興政策の見方について難しい言葉で論じている。「正義」ブームでこ…の手の本も読むが、法律学の用語の方がもっと簡単に整理していると思う。
ただし、論点は大事なこと。
(1)「不運」と「不正義」とのあいだには、恣意性があるかもしれないとしても、線引きをする努力を続けなければならない。(p64)
不運とは、天災で誰にも違法性や過失がない場合で、不正義とは違法や過失がある場合と考えていいと思う。津波についても、想定外とか土木技術者はいっているが、本当に過失はなかったのか。貞観津波の事例が実はわかっていたのであれば、予測可能性はあったのではないか。ただし、海岸堤防の相手は自然公物なので、河川と同じく、過失があったとはいえないのか。
いずれにしても、原発は人災、津波は天災といって、津波被害を本来防護すべき公物管理者が人ごとのように言っているのはおかしいと思う。もっと自責の念を持つべき。
(2)一般にコントロールの及ばない不運によって生じる不利益に対しては補償がなされるべきだが、自分の選択の結果生じた結果生じた不利益は補償の対象にすべきではないという立場は、「運の平等論」や「運の平等主義」といわれる。
自分で危険を生じて原発にちかづいた人には、補償がいらないという考え方。一理あるが、現在の判例では、せいぜい過失相殺するぐらいかな。でも大事な論点だと思う。
(3)現在の社会科学においては、具体的な制度設計や現実的な政策決定を理解すること、そしてそれに専念することが適切な学術的態度だと思われている。しかし、それは誤った思いこみである。なぜ、そもそも制度をつくる必要があるのか、どういう制度を実施することが正しいのかを知ることなく、制度や政策を分析したり、評価したり、ましてや提言したりすることはできない。(p88)
もっともだと思う。
だけど、公共哲学って、大事なことを言っているのだけど、もっと易しく説明できないのかな。続きを読む投稿日:2012.04.13
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