こころ
夏目漱石(著)
/集英社文庫
作品情報
学生の私が尊敬する「先生」には、どこか暗い影があった。自分も他人も信じられないと語り、どんなに親しくなっても心を開いてくれない。そして突然、私の元に「先生」から遺書が届く。そこには、「先生」から人生の全てを奪った事件が切々と綴られていた。親友と同じ人を好きになってしまったことから始まる、絶望的な悲劇が――。人間の本質を見据え、その真実の姿を描ききった、漱石の最高傑作。
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商品情報
- シリーズ
- こころ
- 著者
- 夏目漱石
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社文庫
- 書籍発売日
- 1991.02.25
- Reader Store発売日
- 2013.07.19
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 348ページ
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この作品のレビュー
平均 4.1 (207件のレビュー)
-
これが「岩波文庫読者が選ぶ100冊」の一位に選ばれたのは、納得です。見事なエンタメ推理小説でした。最初に「謎」が提示されて、「伏線」が張り巡らされて、「事件」が起きる。そして「真の原因」は「何処か」に…隠されている。
私はその人を常に先生と呼んでいた。だからここでもただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間を憚かる遠慮というよりも、その方が私にとって自然だからである。私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ「先生」といいたくなる。筆を執っても心持は同じ事である。よそよそしい頭文字などはとても使う気にならない。(6p)
冒頭である。「先生」と呼ばれる過去形の人物は一体何者なのか。この書き方自体に何かの「事件」の匂いがぷんぷんする。
38pには意外な展開が書き込まれていた。まさかこれが青年の先生への同性愛の恋物語だとは知らなかった。しかも、青年はそのことに気がついていないが、先生はきちんと気がついていながら「私は男としてどうしてもあなたに満足を与えられない人間なのです。それから、ある特別の事情があって、なおさらあなたに満足を与えられないでいるのです。私は実際お気の毒に思っています。あなたが私からよそへ動いて行くのは仕方がない。私はむしろそれを希望しているのです。しかし……」と断る。 こんな生々しい会話もしているわけです。しかも、ここで「ある特別の事情」と伏線が張られる。
「あなたは本当に真面目なんですか」と先生が念を押した。「私は過去の因果で、人を疑りつけている。だから実はあなたも疑っている。しかしどうもあなただけは疑りたくない。あなたは疑るにはあまりに単純すぎるようだ。私は死ぬ前にたった一人で好いから、他を信用して死にたいと思っている。あなたはそのたった一人になれますか。なってくれますか。あなたははらの底から真面目ですか」「もし私の命が真面目なものなら、私の今いった事も真面目です」私の声は頸えた。(87p)
この頃になると、死亡フラグ立ちっぱなし。
事件の真相らしきものは、第三部の「先生と遺書」によって展開されるのではあるが、実はテーマとしては第一部の「先生と私」で出尽くしていると言って良い。名探偵ならば第一部で「解決したよ、小林くん」と云うべきところだろう。
「私は嫌われてるとは思いません。嫌われる訳がないんですもの。しかし先生は世間が嫌いなんでしょう。世間というより近頃では人間が嫌いになっているんでしょう。だからその人間の一人として、私も好かれるはずがないじゃありませんか」(50p)
一般的に事件の蚊帳の外に置かれていたと云う評価の「奥さん」ではあるが、常に先生の側に居て約15年、彼女が先生の自殺の「真相」に気がつかなかったわけがない。この言葉に自殺の真相が集約されている。と私は観る。単純に親友Kへの罪の意識でもなければ、「明治の精神」に殉死したのでもない、「人間は淋しい」といったウジウジした気持ちでもない。そして奥さん自身はとっくにそんな夫を馬鹿な男と客観視出来ていることも、この言葉から読み取れる。
人間の心の不可思議さを位置づけた素晴らしい推理小説でした。
2013年7月21日読了続きを読む投稿日:2013.08.21
このレビューはネタバレを含みます
みんな賢いのに生きるの下手すぎて悲しいよ泣泣
レビューの続きを読む
自殺の理由って本当にいろいろなことが絡み合っていて、言えること言えないことたくさんあるし、そのトリガーだけを見てあれこれ言うのはまさに死人に口なしだよねと…思う
多分先生も気付いてないだけでもっと他にも理由とか、心に積もっていた出来事がたくさんあったんじゃないか、それと同じように死を引き止める出来事だってあったんじゃないか(だから10年も死を引き延ばしていたんじゃないのか)と思う
人のこころって本当に複雑でわからないね続きを読む投稿日:2024.02.02
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