さよならの次にくる〈卒業式編〉
似鳥鶏(著)
/創元推理文庫
作品情報
「東雅彦は嘘つきで女たらしです。東雅彦は2月1日、こんなことをしていました」愛心学園吹奏楽部の部室に貼られた怪文書。こんなものを貼ったのは誰だと騒ぐ部員たちが特定の人物を犯人扱いしそうになったとき、オーボエ主席奏者の渡会千尋が「私がやりました」と名乗り出る。渡会千尋。僕の初恋の人だ――。初恋の人の無実を証明すべく、葉山君が懸命に犯人探しに取り組む「中村コンプレックス」ほか、葉山君の小学生時代のエピソード「あの日の蜘蛛男」、探偵役を務める伊神先輩の卒業式の日の出来事を描く「卒業したらもういない」など、〈卒業式編〉は4編を収録。デビュー作『理由あって冬に出る』に続く、ライトでコミカルな学園ミステリ第2弾、前編。
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商品情報
- シリーズ
- 市立高校シリーズ
- 著者
- 似鳥鶏
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 東京創元社
- 掲載誌・レーベル
- 創元推理文庫
- 書籍発売日
- 2009.06.30
- Reader Store発売日
- 2012.10.26
- ファイルサイズ
- 1.2MB
- ページ数
- 258ページ
- シリーズ情報
- 既刊8巻
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この作品のレビュー
平均 3.6 (62件のレビュー)
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さよなら葉山君の初恋、それは見事なミステリー伏線編
「理由あって冬にでる」に続く、シリーズ第2弾となる短編集「さよならの次にくる〈卒業式編〉」は第3弾「さよならの次にくる〈新学期編〉」とセットになっており、〈卒業式編〉は伏線編、〈新学期編〉が収斂編とい…った位置づけになっています。
東京創元社で連作短編集といえば、最後に独立していた短編が結びつきひとつの長編として姿を現すという二重構造でミステリファンを唸らせるスタイルで有名ですが、この「さよならの次にくる」もその系譜につらなる作品集です。そしてその試みは、本作でも見事に成功しているといえます。
〈卒業式編〉は読んでソンをしない作品集ではなく、確かに本作だけでも楽しめますが、続けて〈新学期編〉を読まないと東京創元社連作ミステリの本当の面白さを体感することができず一生の不覚となる青春ミステリー短編集であるともいえます。
●「第一話 あの日の蜘蛛男」
名探偵役伊神先輩に対し、シリーズの主役であり記述者でありワトスン役である葉山君。この短編はその葉山君の小学生最後の日、卒業式の日に起きた事件。
初恋の女の子にラブレターを渡そうと決心した葉山君だが、ビルの屋上に閉じ込められてしまう。しかし、なぜか葉山君は鍵がかかっていて入れない隣のビルの屋上に移動していた。どうやって?真相を知っている当事者葉山君を前に、謎解きをする伊神先輩。ええっ?
トリックに現実性があるかは別にして、メインヒロインである演劇部の部長「柳瀬」先輩の笑いを誘う言動、「伊神」先輩の名推理、弟的キャラ「葉山君」といった主要キャラのかみ合わせが機能しており、コミカルな正統派ミステリとして楽しめます。
●「第二話 中村コンプレックス」
女子校「愛心学園」。そこは葉山君の初恋の少女が通う学園だった。そこに起きたのは密室の吹奏楽部部室内に、部員の交際相手、東雅彦を告発する怪文書が貼り付けられる事件だった。
自ら犯人だと名乗り出た初恋の少女、渡会千尋を救うため奮闘する葉山君の推理と初恋の行方はどのように決着を迎えるのか。前作ではやや中性的な感じだった葉山君だが、彼もオトコノコだったと認識させる好短編。コミカルな青春ミステリ短編として心地よく読めますが、これが次作の〈新学期編〉で意外な結末を迎えます。
●「第三話 猫に与えるべからず」
第一話同様、これも過去の事件。
違和感を覚えさせながらも読者を騙す叙述トリックも見事ですが、短編の配置も考えられています。「第二話」で葉山君が伊神先輩に対抗心的なものを持っていたことを知らされているので、この作品での伊神先輩に嫉妬する記述がすんなりと入ってしまい、作者のワナにかかってしまいます。
●「第四話 卒業したらもういない」
卒業式に、なぜか開かずの部屋から姿を消す卒業生の伊神先輩。先輩の携帯に電話するも、番号が使われていないことを知る葉山君。伊神先輩の友人から聞いた住所のマンションを尋ねてみたが、そこには伊神という住人はおらず、空き室になっていた。
名探偵の消失、そしてマンションのドアチャイムの下に書かれていた英語の落書きは何を意味するのか。
伊神先輩捜索の過程で断片的に明らかになる伊神先輩の過去。
消失トリック以外の謎や伏線、伊神先輩の不自然な行動等に対して回答が示されず、消化不良・不完全燃焼感を覚えずにいられない作品ですが、次作〈新学期編〉で全てが明らかになります。〈卒業式編〉が伏線編であることを示す作品です。
繰り返しますが、この作品は次作〈新学期編〉を読むことでより味わえる作品となっています。2年になり先輩と呼ばれることになった葉山君の成長とすべての真相を知りたい方は、〈新学期編〉も続けて読まれることをお勧めします。続きを読む投稿日:2013.10.12
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このレビューはネタバレを含みます
この本を読んで、なんだかいろいろ身につまされた感じ。何がというよりかは、全体に醸し出される雰囲気に。
レビューの続きを読む
こうした高校生・大学生が登場する小説をよく読むのは、灰色の高校生活だったことの代償行為なのかもし…れないと常々感じるのだけど、なんとなく中二病的ななにかが働いている気もして、若干の痛々しさもなくはなく。
今回の作品は高校の卒業という、冬から春へ移ろうタイミング。その季節が持つ物悲しさ故だろう、「別れ」の話が多い。高校生の探偵ものという非日常な設定にも関わらず、高校時代の思い出のせいで、妙なリアリティがかぶさってくる。あぁもぞもぞする。
話としては一区切りがつくのか、卒業してしまった彼が今後どうなるのか。連作短編としての構成もかなりよかったので、次の展開が楽しみ。続きを読む投稿日:2023.12.14
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