この作品のレビュー
平均 3.8 (58件のレビュー)
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私は酒飲みである。休刊日はまだない。
高野秀行といえばブータンでイエティを追いかけながら酒を飲んだり、謎の独立国家ソマリランドに潜入したりしている肩書きは辺境作家だ。「誰も行かない所へ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」…のが本文ではある。イスラム圏とはいってもいろいろ差はあるが原則としてイスラームは酒を飲まない。国によっては外国人でも飲めない。それでも高野氏は酒を求めてなんとかたどりつく。アル中ではないと言いながら夜になると酒を求める。そしてそれを書き残したのがこの本だというわけだ。
パキスタン、アフガニスタン、チュニジア、イラン、マレーシア、イスタンブール、シリア、ソマリランド、そしてバングラディッシュ。この全ての国で酒を飲んだ人はおそらく他にいないだろう。だいたいソマリランドは独立国家として認められていない。
イスラム圏で酒を飲むためにはまず売ってるところを見つけないといけない。探すために聞く相手は先ず運転手だ。そしてもう一つが学生である。そのどちらでもないのがアフガニスタンのケースでカブールは建物に何も表示がない。爆弾テロ対策ということだが少しでもビールがあることにかけて中華料理を探す。イタリアンでもフレンチでもいいはずなのに取材初日からそんな高いところにはいけない、中華なのだと。しかしガイドブックに載っていた中華料理は半年前に爆弾テロでなくなっていた。中華料理屋を爆破してどうするんだか。ホテルのフロントがようやく思い出したところをメモってもらいタクシーで乗り付けるが降ろされた場所はトタンの壁の前、とりあえずそこの門をばんばん叩くと郵便受けの様に覗き窓が開く。見える眼はおそらく中国系の女性、「ここ、料理屋?」「あんた、何が欲しいの」「ビールだ」合言葉は正しく門は開いた。中にある木造の民家に入るとそこにあったのは。
大きな木のテーブル、ミラーボールにバーカウンターと酒のボトル奥からは麻雀の音が聞こえる。そしておばさんがどなると出てきたのはケバい化粧と露出の高い服を着た中国人の女の子だった。たどりついたのはただの中華料理ではなくカラオケ兼置屋だったのだからイスラム過激派からすれば爆破する理由はある。「ビール二本」「何か食べるものある」「面条」よって来た色気はまるでない女の子を適当にあしらいながらカラオケも断わりビールがあればいいとおかわりをすると女の子はあきらめて麻雀にもどる。そして出てきた料理はトマト卵麺、なすとピーマンの炒め物、インゲンと牛肉の豆板醤炒めこれが劇的に美味い。麺以外は賄いだったのだが。「お勘定」「二十五ドル」「高い!」「じゃあいくらだ?」「十ドル」「十五ドルでどうだ?」「じゃあ十二ドル」「オーケー」店を出ると塀越しにアフガンの岩山が見え、麻雀牌のじゃらじゃら言う音と娘たちの笑い声。俺はいったい今どこにいるんだろう。
チュニジアでは森の奥のオアシス・バーに行き、イランではキャビアでビールに執念を燃やす。シリアのレストランで仲良くなった美人学生のサバちゃん「あたし、父の前でも飲んでるもん!」というその父親の仕事を聞くとカリフォルニアのシュワちゃんと同じだという。俳優!ではなくダマスカス州知事の娘だった。バングラディッシュではミャンマーの国境地帯の少数民族の村まで酒を求めて行く。ガイドのバイさんがつぶやく「私たちの宗教では酒を厳しく禁じている。なのに、どうして私たちは酒を造って飲んでいるのだろう?」非常に細かく規定が決められているイスラームではなく仏教の五戒の最後が「酒を飲んではいけない」だ。表では宗教上の決まりを守り裏では酒を飲むイスラームと境界自体がはっきりしない仏教、高野秀行がさがしていく辺境とはこういうところだったりもする。続きを読む投稿日:2014.11.30
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私は酒飲みである。休肝日はまだない。
禁酒のイスラム国で酒を求めてさすらう旅物語。筆者ほどの酒への渇望はないが、酒飲みであれば、休日にほろ酔いで読むときっと楽しい。
各国の風景の写真は美しく、飲みな…がら撮影した写真はその国々の呑兵衛文化が垣間見えるのもまた楽しい。続きを読む投稿日:2024.02.18
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