美男へのレッスン(上)
橋本治(著)
/中公文庫
この作品のレビュー
平均 4.5 (4件のレビュー)
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このわけわからなさは確信犯!?でも「美男」への思いはホンモノ!
これは、橋本治が美男について論じた本である。
いや、読んでみたら美男について書き散らしたという印象の強い本であった。
元々は、雑誌に連載していたもので、それを3倍くらいに加筆して、1994年に単行…本となった。そして、2011年、文庫化している。
文庫版のあとがきによると、何かものすごく言いたいことがあって、書きたいことがあって、書いたみたいだけど、それが何かよくわからないようである。それ故、とても「へんな本」であるらしい。
著者がそういうのだから間違いない。
とにかく、脱線が多い。著者は「美男」について並々ならぬ思い入れがあるらしい。それゆえ、思い浮かんだ美男について、とにかく心ゆくまで語る。で、本論はどうなったんだ?ということもしばしばあった。
が、文句なしに面白いし、個々の例はわかりやすい。たとえ、例に挙がっている美男(映画俳優など)を知らなくても、橋本氏の語りを聞いていると、その男がどのような美と魅力を持つのかが、
ありありと伝わってくる。ただわかりにくいのは、最終的に著者が何を言いたいのかである。
普通に考えると、これは致命的な欠点であるはずだが、そんなことどうでもいいくらいに、熱い(時に暑い)し、ユーモアに溢れている。
しかも、いつのまにか後書きに相当するような部分に突入していて、それが3章くらい続いているようだ(笑)
が、まあ、折角読んだので、骨格になっている論をいくつか挙げてみようと思う。
・美男と美女は全く異なる。
・それは、現在の社会のあり方が「男社会」であるからである。
・近代という時代、美男のあり方が大きく変わった。
・近代、「顔のない美男」というものが出現した。
・・・というように、結構社会学的な見方が前提となっている。
で、その橋本美男論の核心とも言うべき「顔のない美男」論によると・・・
「近代」とは人々が平等を目指した時代である。民主化、と言ってもよい。近代を作った男達は、男である限り、人間に差などないはずだと思った。平等という理想を達成した以上、皆が理想というべき「美男」である。しかし現実に容貌には差がある。「自分の顔」というのはあってはいけない差異で、それゆえ男達は自分の顔を隠し、否定し、自分が「男である」というだけで「美男である」と思い込む。そのような男を「顔のない美男」と呼び、最も厳しい非難の対象としている。
この本の中で最も読みやすく面白いのが「Lesson8 明快ブオトコ講座」であろう。
ブオトコとはなにか、を考えることによって、美男とは何かをしる手がかりとなりのだが・・・
「ブオトコとは「顔のない美男」を自覚しない男のことである」
と言明している。
そう、よくわからん本だが、ちゃんと最後の方に太字で書いてるよこの人。
「そして、一番重要なことは、「自分の顔を持つ」―これだけである。」
橋本治は整った容貌を持たず、ハゲで、ハゲ隠しのために金髪にしてしまう変な中年であるが、「自分の顔」というものがどうしても捨てられない。だから、「顔のない美男」にはなり得ない。だから、美男でなくても平気なのだそうだ。
・・・(笑)
何か、むちゃくちゃな脱線やら飛躍やらがあったし、橋本氏自身もかなり変な人であることが判明してくるが(この変さはやはり読んでみるのが一番である)、結構まともなところに行き着いている。
もしかしたら、まともそうに見えたり賢そうに見えたりするのを避けて、敢えてこんな支離滅裂な形を取っているのかもしれない。
だって、金髪にした理由の一つが
『窯変源氏物語』を書いたことにより「エラい人なのかもしれない」という誤解を被りそうになり、それがイヤで「ただの金髪のバカ」になろうとした
というのだから!
うん、この人からそれもありそうだ。
というわけで、頭脳明晰で容姿の美しくない男が、バカを装いながら美男について論じている・・・といろんなところでバランスの悪い本だ。
そのバランスの悪さも計算のうちかもしれないし、いい味を出している。
だがしかし、この人の美男に対する熱い思い入れは本物だ。それは、どんな風に読んでも感じ取ることができる。
それを感じ取ったところで何の役に立つのかは、全くわからないが(笑)続きを読む投稿日:2014.09.06
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現代社会において「美男」が置かれている位置について考察をおこなっている本です。
著者はまず、オードリー・ヘップバーン主演の映画『パリで一緒に』を題材に、中年のシナリオライター役で登場するウィリアム・…ホールデンと二枚目俳優のトニー・カーティスを対比しながら、若い美男に対抗意識を燃やす中年男と、そうした中年男の思惑とは無関係に「それ自体でバカかもしれない」美男との齟齬に注目しています。著者のまなざしは、中年男と美男の自己認識における相違に注がれています。すなわち、すでにロマンをうしなって現実に生きているという確信をもっている中年男と、この社会において美男としてのスタイルを引き受けざるをえないということを認識している美男の、それぞれの自己認識のありかたが主題となっています。
こうした自己認識における対比は、その後変奏されつつ追求されていきます。たとえば著者は、美男の悩みは「せっかくここまで自分は現実に適応してしまっているのに、どうして現実は自分を受け入れてくれないのだろう」ということに尽きるといい、美男じゃない男の悩みは、「せっかくここまで自分は現実に適応しているのに、どうして現実は自分を受け入れてくれないのだろう」というものであると喝破します。美男は、すでに具体的な他者と出会ったところから、具体的な関係のなかで悩みをいだくのに対して、美男でない男は、観念のなかで他者との出会いを思いえがいて、どのようにすればそこに到達することができるのかと悩んでいるのだと論じています。
著者にはすでに『蓮と刀―どうして男は“男”をこわがるのか?』(河出文庫)という男性論があり、本書の主題もある程度それとかさなっていますが、本書では映画や歌舞伎、浮世絵や芸能界についての著者の考えがさまざまなところに差し挟まれており、それぞれの議論も興味深く読むことができました。続きを読む投稿日:2020.10.23
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