自殺──生き残りの証言
矢貫隆(著)
/文春文庫
作品情報
「こんなに切ったのに何で死ねないんですか……」「何で血が止まっちゃうんですか?」自分の手首を、もう少しで切断するくらい切り裂いた男性が、治療にあたった医師たちに言った言葉だ。救命救急医療センターで、自殺を図って死ねなかった未遂者たちに取材した異色のルポルタージュ。なぜ人は自殺を企てるのか、なぜその方法を選んだのか、本当に死ぬつもりだったのか、自殺する瞬間は怖いと思うのか……。自殺未遂者の肉声を基にその心理を解きあかす!
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商品情報
- シリーズ
- 自殺──生き残りの証言
- 著者
- 矢貫隆
- 出版社
- 文藝春秋
- 掲載誌・レーベル
- 文春文庫
- 書籍発売日
- 2000.02.10
- Reader Store発売日
- 2011.06.10
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 309ページ
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この作品のレビュー
平均 1.5 (2件のレビュー)
-
救命救急センターに運ばれてきた自殺未遂者へのインタビューです。
死にたいかも?どうしよう。くらいの時に読むといいです。
本当に死にたい時の方には、何の抑制力もないお話しです。投稿日:2004.10.29
自殺未遂者の証言が目白押し。とはいえ単に数を撃ちまくって世間に訴えるということではなく、数人の話が連続しており、ひとつの物語的展開を形成している。登場人物は死の淵からの生還者であるため、そのステージ…は大病院の病棟が主。そこからあふれる証言はどれも目を覆うようなものばかり。単に「血が出た」とか「気が遠くなった」といったありきたりなものではなく、「痛い」だの「苦しい」だのといった次元はもはや超越している。
自らの意思で向かう死と、そうではない死は同じものなのか。この問題提議は「人の行動」あるいは「選択」というものの深層へと迫るものである。空腹時には何か食べたいと考える。眠気が襲ってきたときには布団に入って思い切り寝たいと考える。「死にたい」という欲求もそれと同じようなプロセスを経ているように思う。あらゆる欲求でも「自分は今これを本当に欲しているのか」と考えることはあるだろう。単に習慣的に「やらなければならないこと」を自分が「やりたいこと」と認識したり、周囲の承認を得ることが自分の目的であることの延長で道徳的な振る舞いをやりたいと思ってしまうことなどなど。他のケースと異なるのは「死の欲求」満たしたときには、満足を感じる自分がもうそこにはいないということである。
単純に「生きててよかったね。もうバカなこと考えるのはよそうね」というありきたりな結論で済ませるのもどうかと思うが、それはそれで事実である。死ねば無となり、その後の心配はする必要がないとしても、万が一生き残った場合は身体的後遺症や経済的問題といった今後の見通しがさらに悪くなるという大きな損害を被る。そうした読みができれば自殺を考えている人も躊躇せざるをえないだろう。しかし本当に死を覚悟した人はそんなことすら考えるほど冷静ではない。自殺を図ってその結果を左右するのは、そうした心情も影響しているのかもしれない。
現状よりも死を選択しようとしている人に、綺麗事は通用しない。しかし、そんな追い詰められた人にも説得力がある理屈は「死は取り返しがつかない」ということではないかと思う。どのような人間でも間違える、というテーゼは誰しも納得のいくものであろう。今自分がしようとしている選択は正しいのか。よほど自信に満ちた人生を歩んでこなかった限り「自分は間違っていない」とは言い切れないはずである。そしてそういう人が自殺しようと思うのは極めて珍しい。世の中に「正しい」「正しくない」といった議論は数多くあるが、あらゆるテーマと「死」というテーマとの確かな違いは「可逆性」の有無である。続きを読む投稿日:2015.05.18
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