この作品のレビュー
平均 4.2 (12件のレビュー)
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ことばの教養
著:外山 滋比古
紙版
中公文庫
おもしろかった。
日本人にとって、複雑になってしまった日本語について語るエッセイ集
■心を伝える
・日本のことばはまず目で話す。そして、そのあと、…口でも話すようになっている。
・だから、電話のように、目がきかないと、パンドラの箱のようにいろいろな間違いを飛び出させる
・いま、NHKのアナウンサーは一分間に300字くらいの速さで原稿を読んでいる
・このごろの人気タレントを注意してごらんなさい。たいていが早口ですよ。
・逆にゆっくりした話し方をしようと心掛けているが、もともとが早口のせいもあって、なかなかうまく行かない。
・わかものは年寄り以上に言葉にうるさいことがこの調査にもはっきり出ている
・わかものの中にことばの老人が住んでいるらしい。保守的である。他人が傷つけまいとする気持ちがつよい
・センテンス(文)の終わりは、句点(マル)、句や節の終わりは読点(テン)をつける
・学校でそう教わって、その通りにしてきたが、やがて、はっきりきめられないこともあることに気が付くようになった。
・センテンスであっても、意味が大きく次へ流れるようなときには、マルでなくテンを使うことが多くなった
・「…と思います」が悪文であることはたしかだ。
・電話は便利だと思っている人たちはすこし誤解している。
・かける側には、簡便である。
・かけられる側はありがたくないことが多い
・手紙で人と付き合うコツは、こまめに返事を書くことにつきる
・こまめ、というのは、すぐということである
・ふみの友、というのは、双方が返事を出す心がけさえ失わなければ、いつまでも続くのである
・年賀状にコピーを送る人はないが、添え書きのまったくないのは、コピーより悪いかもしれない
・かといって、すべてに添え書きできるとは限らない。へたに書いてはまずいような公的な相手もある
■諸家の書簡
・スペインのことわざに、「どういう人間といっしょに暮らしているかを告げよ、しからば、君がいかなる人物かを言い当てよう」、というのがある。
・怠惰は弱き心をもてるものの隠れ家にすぎない
・今の人のことを軽蔑した口ぶりで語ってはいけない。古人のことをやたらにありがたがってもいけない
・乃木将軍、夫人の辞世の句
うつし世を神さりましし大君の、みあとしたひてわれはゆくなり
・出てましてかへります日のなしときく、けふの御幸に逢ふそかなしき
■読書の愉しみ
・本があまりにもたくさん出るので、落ち着いていられないのかも知れない
・追い立てられるように、あわただしくつぎつぎ読む。
・読んだ本がその場でわかってしまわないと承知しない、せっかち読者である
・ささやかな読書歴を振り返ってみても、本当に影響を受けたと思うのは、たいてい、はじめはよくわからなかった本である。
・わかれば安心してすぐ忘れる
・わからぬからいつまでも心にかかって忘れない、反芻しているうちに、だんだん心の深部に達するようになるである。
・三上 馬上、枕上、厠上
・ヨーロッパに「名著を読んだら著者に会うな」ということわざがある
■読書のヒント
・禅でいう、啐啄(そくたく)の機、孵化する卵を親鳥がつついて殻を破ってやる。このタイミングを誤ると雛は死んでしまう
・日本ではじめての普通語辞書「言海」をつくったのは大槻文彦である
・明治20年代の日本は外国に対して恥ずかしくない近代国家の形をととのえるのに、追われていた。まず何が必要か。
・憲法、中央銀行、国語辞書。近代国家に欠かせない、政治、経済、文化の柱となる仕事である。という認識があった。
・言海は明治初年のナショナリズムを母体として生まれた
・本を読むのもつきあいなら、一度だけで本当のところはわかりにくい。
・おりにふれて旧交をあたためる。
・長年親しんでいるはじめてわかる本がある。
・読書百遍意おのずから通ず。
・世の中があわただしくなったが、本とのつきないは静かに深くありたい。
・やはり、おもしろくなくてはいけない。
・おもしろいというのは、おもしろおかしいのと同じではない
・いまの世の中には本当におもしろい本にめぐり合うことは昔に比べて本が多くなっているだけに困難である。
・真の良書、掛け値なしにおもしろい本は、どれかということを今ほど問われている時代はないと言ってよい
・教育はある程度の権威を前提とする
・権威とは権力をふるって威張ることではない
・尊敬に値いすると思われる存在にはいくらそっとしていてもおのづから権威がそなわる
■ことばと文章
・文章料理の上達には、休ませないことだ。毎日つくる、つまり、毎日書く。
・欲を言えば、ほめてくれる人が身近にあるといい
・ある老詩人が、自分を育ててくれたのは、ほめられたことばであると告白している。
・日本人はつよいことばをはばかる。
・敬語をやかましく言うのも当然だ
・皮肉なことに、われわれ自身そのことを忘れがちである
・手紙より電話のほうが多くなるのは、現代が相手のことを考えなくなったためであろう
目次
1 心を伝える
2 諸家の書簡
3 読書の愉しみ
4 読書のヒント
5 ことばと文章
あとがき
ISBN:9784122050648
出版社:中央公論新社
判型:文庫
ページ数:240ページ
定価:571円(本体)
発行年月日:2008年10月
発売日:2008年10月25日初版
発売日:2010年07月20日再版続きを読む投稿日:2023.12.25
この本を読んでまず感じたのは、まるで「徒然草」のようだということ。氏の博識、幅広い人間関係と多くの経験からくる言葉は納得の一言だ。人柄を思わせる明快な語り口やユーモラスな発想など、兼好法師を思わせる。…
「伝える」「読み取る」難しさは、本や手紙だけでなく人間関係にも当てはまる。氏の、コミュニケーションには言葉のセンスが必要というご意見には、我々日本人が に欠けている教養と感服した。続きを読む投稿日:2022.11.10
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