うつほ物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典
室城秀之(編者)
/角川ソフィア文庫
作品情報
異国の不思議な体験や琴の伝授にかかわる奇瑞などのローマン的要素と、源氏・藤原氏両家の皇位継承をめぐる対立を搦めながら進行するスケールの大きな物語がはじめてわかりやすい形になった。※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
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商品情報
- シリーズ
- ビギナーズ・クラシックス 日本の古典
- 著者
- 室城秀之
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川ソフィア文庫
- 書籍発売日
- 2007.06.23
- Reader Store発売日
- 2012.04.20
- ファイルサイズ
- 2MB
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この作品のレビュー
平均 3.2 (5件のレビュー)
-
うつほ物語
源氏物語の先駆けになったとも言える初の長編小説。四代に渡る秘琴の伝授を中心とした宮廷の物語。
秘琴の伝授した俊蔭、尚待、仲忠、いぬ宮と宮廷での皇位継承問題が一見乖離したストーリーになる…かと思いきや、どちらものストーリーもそれぞれの内容を深めるために必須でこれまでの長編物語にできているこの作品は源氏物語にもない素晴らしさを持っていると思った。
確かに、作者が注で言っているように矛盾する点が多くあって疑問に思わざる終えない点はたくさんあるが、無理やりに辻褄を合わせようとするのではなくて、それでこそ最初の長編物語として受け入れているこの作者の姿勢もこれから自分で古典を研究していく上で参考になった。全部現代の尺度で測るのではなくて、現代から見れば欠陥の部分も欠陥として手ではなく、それも一つの魅力として受け止めることでもっと好きになれるような気がした。
自分の特に印象的な場面としては立坊問題のときに父正頼は自分の娘の御子が春宮になれないということで出家まで考えていたシーンである。
外戚となることで実権を握れるということは日本史で学んでいたが現代の感覚とはやはり離れていて、実感がしづらかったが、出家を考えるほどにやはり大事であることを感じれた。そのように考えると、やはり娘からしたら御子を生まなくてはいけないというプレッシャーや春宮にしなくてはといけないプレッシャーに日々苦しんでいたのだと思う。
他の作品ではどちらかというと恋に思い悩む
女性の姿が多く描かれていたがそれに加えて、一家の繁栄へのプレッシャーがかかっていたと思うと本当にいたたまれない生活をしていたのだと思う。源氏物語で桐壺が帝の寵愛を一身に受けていることに対して、他の女御や更衣が意地悪をした気持ちも今になって、少しわかるような気がした。続きを読む投稿日:2020.08.13
ボリューミーで、巻同士の前後関係に問題があるとかで、あまり一般に読まれない古典作品と聞いている。
実際、私も学生時代、文学史の試験のために、作品名くらいは見たなあ、くらいの関わりしか持ってこなかった。…
一度、現代語訳で読んでみようと思ったのが昨年。
でも、源氏のような読書環境は、このマイナーな作品には望むべくもない。
昨年、ようやく津島佑子のジュニア向けのリライトを読んだばかり。
ビギナーズクラシックスのシリーズは、ハイライトの現代語訳→原文→解説という構造になっている。
津島版で読んだものは、あて宮への求婚譚が中心にまとめられていた。
春宮に嫁いで、寵愛を一心に集めながらも、仲忠への思いが残っていて、「不機嫌なお妃」になってしまう―という結末だったような気がするが、この本ではそんな気配は全くない。
この本で「○○宮」という呼称が、内親王を母とする子どもに許されたものだったとか、践祚と即位の違いとか、六歳まで乳を飲む幼児の記述は必ずしもヘンなことではなかったとかいう解説も、役に立つ。
原文をわずかずつ読むことができて、よかった。
尚侍、仲忠、いぬ宮の三人の合奏の場面のシーンの、なんと綺羅綺羅しいこと。
楼の巡りは、まして、さまざまに、めづらしう香ばしき香、満ちたり。三所ながら、大将おはする渡殿にて弾き給ふなり。下を見下ろし給へば、月の光に、前栽の露、玉を敷きたるやうなり。響き澄み、音高きことすぐれたる琴なれば、尚侍のおとど、忍びて、音の限りも、え掻き鳴らし給はず。色々の雲、月の巡りに立ち舞ひて、琴の音高く鳴る時は、月、星、雲も騒がしくて、静かに鳴る折は、のどかなり。(「楼の上」)
大分古文を読み慣れて「あからしき」、「こくばく」「けけしき」、「景跡(けうさく)」、「桃楚(ももすはえ)」などなど、知らない言葉がたくさん出てきた。
これもまた楽しい。続きを読む投稿日:2016.02.27
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